「みそラーメン」と「塩らーめん」どっちが人気か

これまで「サッポロ一番」は、シリーズ累計で250億食以上を販売したという。その中で“最強2トップ”といえる存在が「みそラーメン」と「塩らーめん」だ。

今回、「最も好きなのは塩らーめん」です(30代の男性会社員)という声も聞いたが、塩らーめん派ではなく、みそラーメン派という人も多い。さまざまなデータで調べても「サッポロ一番 みそラーメン」が首位、「サッポロ一番 塩らーめん」が僅差で続く。

「2019年、ユーザーの方にTwitter上で投票していただき決着をつける『サッポロ一番 みそ派塩派大論争』キャンペーンをしたことがあります。その時も大接戦でした」

その結果は、次の通りだった。

「サッポロ一番 みそ派塩派大論争」の投票結果(2019年)

「サッポロ一番 みそラーメン」が発売された1968年、「サッポロ一番 塩らーめん」が発売された1971年は、ともに昭和40年代だ。この時代から日本人の食生活も大きく変わり、簡単便利なインスタント食品も次々に登場した。

ちなみに、みそラーメンは、レトルトカレーの「ボンカレー」(大塚食品)と、塩らーめんは、カップ麺の「カップヌードル」(日清食品)と同じ発売年だ。

みそ味、塩味は当時としては革新的だった

「みそラーメンと塩らーめんは、即席麺の味としては先駆者でした。発売当時、すでに即席麺は各家庭に入っていましたが、ほとんどがしょうゆ味だったのです」

みそ味のラーメンに、北海道を思い出す人も多いだろう。国民の所得が向上した昭和40年代、道内は巨大観光地となった。その人気に拍車をかけたのは、流行歌では「知床旅情」の大ヒット(1971年)、そして「札幌冬季五輪」(1972年)といわれる。

当時、みそ味のラーメンを現地で食べた人もいたが、一般家庭で手軽に作れる「サッポロ一番」のみそラーメン、塩らーめんは異色の味だっただろう。みそラーメンに添えられた「七味スパイス」、塩らーめんの「切り胡麻」も斬新に思える。

「開発を陣頭指揮した井田毅(サンヨー食品創業者、前社長)は、色味にもこだわっていました。白い切り胡麻を選んだのも、スープに合わせた色彩感覚だったと思います」

実は、半世紀もの間「味はほとんど変えていない」そうだ。

「『サッポロ一番 みそラーメン』は、発売45周年の時に少し味わいを深くしました。粉末スープは、使われるみそを7種類のブレンドから8種類に増やしたのです。麺にもそのみそを練り込みました。でも消費者の方の味への思いもあり、大幅な変更はしていません」

店頭に並ぶサッポロ一番
筆者撮影

川井さんは、マーケティング部に来る前は、開発部門でスープを担当していたそうだ。

どんな野菜ともマッチする味わい

袋麺に何も入れずに調理するのを“素ラーメン”と呼ぶ人もおり、「本当に疲れている時は素ラーメンにします」(20代の女性会社員)という声も聞いた。

だが、昔からそれでは「栄養が偏る」と言われてきた。栄養バランスとしては野菜を入れるのが望ましい。この人も「基本は冷凍野菜や乾燥わかめを入れます。塩らーめんの場合は、卵とネギも入れて中華スープっぽくして食べることが多いです」と話していた。

「サッポロ一番」を調理する際に、入れる具材は何が多いのだろう。

「どの味でもタマゴを入れる人が多いです。生卵、溶き卵、ゆで卵のほか、目玉焼きという人もいます。みそラーメンは、もやしやコーン、塩らーめんにはキャベツを入れるのも多いです。みなさん、冷蔵庫の中で余っている野菜を使われています」

昔の「サッポロ一番 塩らーめん」のテレビCMでは「♪白菜、シイタケ、ニ~ンジン、季節のお野菜いかがです~」と訴求していた。その後も、野菜を入れるシーンのCMは何度か投入してきたが、栄養バランスを意識した訴求だった。