新たな袋麺の味わい方が消費者に浸透している

「現在、袋麺全体の数字は安定しており、2020年のような伸びはありませんが、2019年まで微減傾向だった数字が回復しています」

「サッポロ一番」のマーケティングを担当する川井理江さん(サンヨー食品 マーケティング本部 マーケティング部 第二課 課長)は、袋麺市場全体をこう説明する。

「その中で、2021年の『サッポロ一番』は一昨年の伸びを維持する前年並みで健闘いたしました。理由は“7つのサッポロ一番”と呼ぶ定番商品が手堅かったことと、アレンジレシピや汁なしで味わうといった新たな提案が、お客さまに受け入れられたと考えています。

また、公式ツイッターやインスタグラムでも情報発信していますが、料理研究家や声優の方など、ブランドのファンを公言する方も、折に触れて発信してくださいます」

川井さんが話した「7つのサッポロ一番」とは、(1)「サッポロ一番(しょうゆ味)」(2)「みそラーメン」(3)「塩らーめん」のほか、(4)「ごま味ラーメン」(5)「塩とんこつらーめん」(6)「みそラーメン 旨辛」(7)「ソースやきそば」をいう(画像参照)。

7つのサッポロ一番
写真提供=サンヨー食品

多くの人が一度は食べたことがあるのが、(1)~(3)の「サッポロ一番(しょうゆ味)」「サッポロ一番 みそラーメン」「サッポロ一番 塩らーめん」だ。

半世紀にわたり「袋麺で首位」を譲らないワケ

「『サッポロ一番』ブランドの発売は1966(昭和41)年で、『サッポロ一番(しょうゆ味)』が最初でした。2年後の1968年に『サッポロ一番 みそラーメン』が、1971年に『サッポロ一番 塩らーめん』が発売されました。この3品が出そろった1972年から半世紀にわたり、袋麺ではほぼ首位を維持しています」

昭和、平成、令和と時代が変わっても、袋麺の首位ブランドに君臨し続けているのだ。

でもマーケティングの世界では「消費者はどんどん変化する」のが共通認識のはず。なぜ半世紀もの間、人気が続くのだろうか。

「『サッポロ一番』に関しては、舌と一緒に記憶も受け継がれていく、と思います。消費者調査では、『小さい頃、お母さんが作ってくれた』『土曜日だけはお父さんが作った』『お父さんが調理できる数少ない料理だった』という声も目立ちます。慣れ親しんだ味なので、実家を出て1人暮らしとなってからも作る人が多いようです」

在宅時間が増え、簡単な料理を作り始めた人も多い。「久しぶりに何かを作ろうとした方に『サッポロ一番』は選ばれやすい」とも聞く。これも「舌」と「記憶」なのだろう。

お湯を注げば勝手に調理してくれるカップ麺ではなく、調理が必要な袋麺を選ぶのは、「自分なりにアレンジをして仕上げる、ちょっとした達成感」ともいえる。

「サッポロ一番」のマーケティングを担当する川井理江さん (撮影のためマスクを外しています)
撮影=プレジデントオンライン編集部
「サッポロ一番」のマーケティングを担当する川井理江さん (撮影のためマスクを外しています)