50代の両親は20代の長女と同居している。長女は大卒後、正社員として働き始めたが、電話応対や上司への報告・連絡・相談などがうまくできない。いくつかの企業に勤めたが、結局退職。受診すると発達障害と診断され、現在はひきこもり状態だ。親亡き後に娘ひとりで生きていけるのか。両親から相談を受けた社会保険労務士でFPの浜田裕也さんの回答は――。
テーブルの上にコーヒーのカップを保持している女性と男をクローズアップ
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親亡き後、子供の生活費の目安は「月13万円程度」だが

筆者は、ひきこもりの子供を持つ家族向けの講演会でお金の話をすることがあります。その内容は、親亡き後の子供の生活設計や公的年金(老齢年金や障害年金)といったものが中心になっています。講演会では筆者が作成した資料を使用しており、講演会に参加できなかったひきこもりの子供が自宅で読んでも分かるような内容にしてあります。

資料の中には、親亡き後、子供の生活費の目安として「月13万円程度」といった記載があります。もちろん金額はあくまでも目安なので、必ず13万円が必要というわけではありません。しかし、金額を明記することにより「将来に向けて今からどのような行動をするべきか?」といったことを親子で話し合うきっかけにしてもらいたい。そのような筆者の思いが込められているため、あえて金額を記載するようにしています。

講演会に参加した、ある父親(58)は資料を持ち帰り、ひきこもりの長女(26)にも読んでもらうことにしました。父親ももうすぐ60歳で定年退職を迎えるので、長女も交え家族でお金の話をしておきたいと思ったからです。

しかし、資料を読んだ長女は「仕事で月13万円を稼がなければ生きていけない」といった思い込みにとらわれてしまい、両親に向かって「今の私じゃとても仕事をして月13万円も稼ぐことはできない。もう駄目だ。おしまいだ!」といったことを訴えるようになってしまいました。それを心配した両親は筆者に相談することに。相談当日、筆者は両親から事情を伺うことになりました。

父親は長女のことについて話し始めました。

「長女は一度自分で『こうだ』と思ってしまうと、なかなかその考えを変えることができないようなのです。講演会の資料を読んだ後、親亡き後の生活費の目安として『月13万円』といった金額に強くこだわるようになってしまいました。しかも長女は『自分自身の収入で月13万円を達成しなければならない』と思い込んでしまったようなのです……」
「なるほど、それは心配ですね。それでは、まず現状から把握させていただいてもよろしいでしょうか」

筆者はそう言い、家族構成や家計収支などを伺うことにしました。