親の資産は6000万円、長女は3000万円相続できるが……

■家族構成
父 58歳 会社員
母 56歳 パート
長女 26歳 ひきこもり当事者
長男 28歳 最近結婚し、父親家族とは別居。
■家族の収入
父 手取り 年収 約600万円
母 手取り 年収 約70万円
■家族の支出
基本生活費など(固定資産税や車関係の費用を含む)月額 約32万円
住宅ローン 月額 約10万円
■家族の財産
現金預金 3800万円
自宅土地 1600万円
父の生命保険 1000万円
父の退職金 1700万円(父が60歳になった時に支給)

財産について父親は次のような説明をしました。

「2年前に祖母(父親の母)が亡くなり約1800万円の現金を相続したので、現在の現金預金は3800万円くらいになります。また、私が60歳になると退職金も支給されるので、退職金の一部で住宅ローンの残債約500万円を一括返済する予定です。私の生命保険を加味すれば、およそ6000万円になります。長男にはいずれ話す予定ですが、万が一のことを考え、長女には3000万円くらいのお金を残そうと思っています」

1万円札
写真=iStock.com/Asobinin
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仮に長女へ3000万円のお金を残せるようであれば、月13万円の収入が達成できなくてもそれほど悲観しなくてよさそうだ。筆者はそう思いました。しかし、どうやら事態はそう簡単にもいかないようです。

父親はさらに続けました。

「いくら私たち両親が『あなた(長女)のために財産はしっかり残す予定』と言っても、まったく聞き入れてくれませんでした。長女が言うには、頭の中に『月13万円の収入を得なければならない』といったことがこびりついてしまい、自分でもどうしようもなくなってしまったようなのです……」

筆者は念のため次のような質問をしてみました。

「ご長女様は20代でお若いですし、まだまだ挽回できる年齢です。就労支援などを受けてお仕事で月13万円を稼ぐのはやはり難しいのでしょうか?」

この質問に両親は顔を曇らせました。

しばらくして、母親は「実は長女は会社で仕事をしていたことがあるのですが、なかなかうまくいかなかったようで……」と前置きをしてから、当時の状況を語りだしました。