「今できる看護はなんだろう」と常に考えている

また、最近こんなこともありました。

私が取っている新聞にクイズがあったので、入居者さんに持って行ってあげました。1日ベッドにいるので、「変化がなくてつまらないだろうな。少しでも楽しめたらいいな」と思ったのです。その方はとても喜ばれ、実際にやってみたそうです。

小さいことですが、入居者さんが喜んでくれることがあったら、お手伝いさせてもらいたいなと思います。

若い頃のように、今はキビキビ働けません。一看護師として、与えられた仕事をこなすことに一生懸命です。

でも、管理の仕事をしていたときよりは、気がラクですね。入居者さんにクイズを持っていってあげるなんて、ゆったり向き合える今だからできることです。

「今できる看護は何だろう」といつも考えながら、働いています。

看護師はいい仕事だと思います。どんな時代でも必要とされますし、ちょっとしたことでも患者さんにしてあげると感謝されるのは、うれしいですね。

何事も断ることはしない

新しい仕事は、自分を試すチャンスになります。人が「やってみたら」と言ってくれたことなのに、私が「できない」と言うのもおこがましいと思って、断わらずに挑戦してきました。

なかでも、大きな挑戦だったのは、精神科の病院の責任者として働いていた40代のとき、看護学校の講師をしたことですね。

総婦長さんからの依頼でしたが、人に教える教育も受けていないので、最初は「困ったな」と思ったんです。でも、「できません」って背中を見せるのは、よくないという気がして、引き受けることにしました。

自分に能力もないのに「やってみます」と言ってしまい、それからが大変でした。

人に教えることは自分で勉強しないといけないので、看護雑誌を読み漁るなど必死になって勉強しました。

自分の意見が社会や看護の世界で通用するのかを確かめるためにも、他の人の意見や新しい情報を知っておかなければと思いました。

看護教育に関する本を毎月2〜3冊買って隅から隅まで読んで勉強し、やっと自分の意見が間違っていないと自信を持つことができました。そして、ようやく授業で教えられるのです。

精神科の看護は、通常の業務でも患者さんが何を思って話しているかわからなくて、迷うことがあります。実務でも迷うことを、生徒さんにもどういうふうに教えたらいいのか、いつも考えていました。教科書通りではなく、実務を踏まえて自分なりに枝葉をつけて授業をしていました。