「スマホと共に育った若者の意見を取り入れる」

【田中】ウォルマートがどうしてDXで成功できたのか、戦略を分析する中で一番見逃せないのは経営者が最初に、企業文化の刷新から手をつけたことです。それまでも顧客中心主義とは言ってきましたが、Amazon並み、デジタルネイティブ企業並に、「顧客をその人の宇宙の中心に置く」カスタマーセントリックにシフトしようとしてきました。

さらに「企業文化をスタートアップのようなスピーディーなものに刷新しよう」というところまで手をつけたからこそ成功できたのだと思います。その辺りは今後どのようにチャレンジされるでしょうか?

【細見】スマホが登場したのが2000年代後半です。スマホと一緒に育った人たちの思考回路、人生経験というのはそれまでの人とはまったく違うはずで、それがますますこれから加速していきます。その人たちは生活者でもあり消費者でもあります。そういう人たちの考え方を取り入れないと、これからの企業、ファミリーマートの未来はないのではないかと社内では常に言っています。

役職者とも話をしますが、若い人たちの意見を取り入れること、耳を傾けることが一番大事だと思います。ウォルマートは少し違うかもしれませんが、弊社の場合はそこから始めていったらどうかと思っています。

【田中】そういう価値観を持つ細見社長が着任されて、業界の中でも期待の持てる会社だと思います。大切なのは形式的なデジタル化というより、経営者一人ひとりがどれだけ聞く耳を持っているのか、価値観に合わせられるのか、ということだと思います。

田中道昭氏
田中道昭氏

「商いの三原則」をファミマにどう活かすか

次にお伺いしたいのは、やはり細見社長は伊藤忠ご出身で、生粋の商人でいらっしゃいます。まさしく強調されているのも「商いの三原則」である「稼ぐ・削る・防ぐ」です。「稼ぐは商人の本能。削るは商人の基本。防ぐは商人の肝。」とありますが、2022年のファミリーマートに求められている「稼ぐ・削る・防ぐ」とはそれぞれどのようなものでしょうか?

【細見】「稼ぐ」はおいしさの追求ですね。昨年「ファミマル」というプライベートブランドを導入しましたが、今年はこれが本格稼働する1年になります。徹底してファミリークオリティのおいしさを追求していきたいと思います。そして、ファミリーマートらしい「コンビニエンスウェア」に代表される商品も強化をしていきます。

今年はポストコロナになっていくと思いますし、消費活動も活発になって欲しい。その上で新しい価値観をどうやって追いかけていくのか。まず、新しい価値観を探っていかないといけない、というのが今年の1年です。