飲酒をしてからどれだけ時間を空ければ運転できるのだろうか。専門家は「起きているときより眠っているときのほうがアルコールの分解が遅くなる。飲酒後に『仮眠を取ったから大丈夫』と判断して運転するのは危険だ」という。「酒ジャーナリスト」を名乗る葉石かおりさんの『名医が教える飲酒の科学』(日経BP)より、一部を紹介する――。
飲酒運転のイメージ
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飲んだ日の翌朝は「もう大丈夫」なのか

もう何年も前になるが、女性芸能人が酒気帯び運転でひき逃げ事故を起こし、その後、彼女が道路交通法違反と自動車運転処罰法違反の罪で起訴された、というニュースがあった。

幸い死亡事故には至らなかったものの、飲酒運転の怖さを改めて感じた事件であった。

人の命を奪う可能性がある飲酒運転は絶対にしてはならない。しかし酒をよく飲む人であれば、知らぬ間に飲酒運転をしている可能性もあるのだ。それは飲み過ぎた翌朝の運転である。

近年、飲酒運転に対する目は厳しさを増しており、飲んだ後にそのまま車を運転して帰るのはダメだという認識は広く定着していると思うが、その一方で、飲んだ翌朝は「よく寝て酒も抜けたし、もう大丈夫」と勝手に判断している人が少なくないように思う。実際、警察庁によると、飲酒運転した理由として、「時間経過により大丈夫だと思った」「出勤のため二日酔いで運転してしまった」などが挙がっているそうだ。

たった一度の飲酒運転で順調だった人生が暗転

また、昨今は「○○市役所の職員、飲酒運転で処分」などというニュースも頻繁に目にする。これまで勤勉に働いてきたのに、たった一度の飲酒運転で人生が暗転する、などということがあり得るのだ。こうした事態に陥らぬためにも、正しい知識を身に付けておきたいところである。

ここで問題になるのは、酒を飲んだ後、どのくらい時間を空ければ車を運転して大丈夫かということだろう。もちろん、酒量やその人の体質などによって、その時間は変わるのだろうが、ある程度の目安を知っておくことは大切だ。

そこで、アルコール問題全般に詳しい、久里浜医療センター院長・樋口進さんに、飲酒運転の怖さや、アルコールが体から抜ける時間や呼気検査の基準などについて聞いた。