ビール中瓶1本でも「酒気帯び運転」になる可能性
まず、飲酒運転の基準についておさらいしておこう。日本における飲酒運転の基準は改正道路交通法で定められている。それによると、呼気1L中に0.15mg以上のアルコールを検知した場合、「酒気帯び運転」としている。0.15mg以上、0.25mg未満なら免許停止(停止期間90日)、0.25mg以上なら免許取消(欠格期間2年)となる。
なお、これを血中アルコール濃度に換算すると、それぞれ0.03%(0.3mg/mL)、0.05%(0.5mg/mL)になる。さらに、呼気中の濃度にかかわらずアルコールで正常に運転できない恐れのある状態となると「酒酔い運転」となり、免許取消(欠格期間3年)となる。
では、酒気帯び運転に該当するのは、これは具体的にどのくらいの酒量を飲んだときなのだろうか。
「体重60キログラムの人が、ビール中瓶1本(500mL)あるいは日本酒1合(純アルコール換算で20g)のお酒を飲んだときの血中アルコール濃度は約0.03(0.02~0.04)%程度です。つまり、ビール中瓶1本を飲んだだけで『酒気帯び運転』の基準値を超える可能性が高いわけです」(樋口さん)
飲酒量が増えれば事故リスクは指数関数的に増える
しかも、この基準値未満の場合でも運転への影響は始まっているという。
「個人差はありますが、アルコールの運転に対する影響は、極めて低い血中アルコール濃度から始まります。例えば、反応時間は0.02%、注意力は0.01%未満といった低濃度から、運転技能が障害を受けるといわれています。そして飲酒量が増えるほどその影響は大きくなるのです」(樋口さん)
つまり、血中アルコール濃度が、酒気帯びの基準より下回っている、軽く飲んだ程度でも、運転能力は確実に影響を受けるということ。当たり前だが、「ちょっと飲んだ程度だから運転してOK」なんてあり得ないのだ。
このようなアルコールの影響により、当然事故のリスクも増すことになる。アメリカで血中アルコール濃度と事故リスクの関係を調べたところ、血中アルコール濃度の上昇に従って事故リスクも上昇していることが明らかになっている(*1)。
「交通事故のリスクは血中アルコール濃度の上昇とともに、ほぼ指数関数的に増加するのです」(樋口さん)
また、ニュージーランドでの研究でも、同様の傾向が確認されているという。