花粉の少ない品種への植え替えが進むも…

行政も、この状況に無策だったわけではない。新たに植林するスギ苗木を花粉の少ない品種に切り替える支援策を進めている。ただ、2018年で花粉の少ない苗木のシェアは51.8%にすぎない。しかも、新世代のスギが大人になるのはずっと先の話。当面は、スギ花粉の飛散量が減少トレンドに入ることはないだろう。

さらに気になる要因がもう一つある。地球温暖化だ。前出のとおり、前年の夏の気温が高いほど雄花が形成されて花粉量が増える傾向にある。温暖化で猛暑が増えれば花粉が増えると考えるのが道理である。森田氏は、言葉を選びながらこう話してくれた。

「予測をしている立場として、温暖化が影響している現場感覚はあります。ただ、解析値と他のデータを突き合わせてみないと、正確な分析は難しい。いま花粉側の解析値を出し始めたところなので、これから明らかになるかもしれません」

花粉が気になる人のコロナ禍の換気方法

中長期的に花粉は減ることは考えにくいが、希望の光もある。花粉予報技術の向上により、以前より花粉から身を守りやすくなっている。

ウェザーニューズは、より精緻な花粉観測・予測データを企業に販売している。企業はそれらを活用した花粉対策商品を展開している。たとえばパナソニックは、空気清浄機を花粉・PM2.5の飛散予測データと連携。室内に花粉が流入しやすい時間帯を予測して運転を開始する「AI先読み空気清浄」機能を開発した。

個人でも対策をしやすくなった。ウェザーニューズのスマホ向けアプリでは、時間ごとの花粉予報を無料で見ることができる。森田氏は語る。

「アプリで、1時間ごとのピンポイント花粉予報を提供しています。コロナ対策で室内の換気が求められていますが、1時間単位の予報を見れば、花粉の少ない時間帯を狙って換気をすることもできます」