「スギやヒノキ以外の花粉も検出できるようにしたい」

花粉予報がビジネスとして成り立つかどうかは、非常に重要な論点だ。環境省は、2002年から花粉観測システム「はなこさん」を運用してきたが、2021年に観測を終了してしまった。その結果、現在、国内で花粉の自動計測を行うシステムは、ウェザーニューズ「ポールンロボ」だけになった。もし同社の花粉予報事業が立ち行かなくなれば、花粉の研究や花粉対策産業にとって大きな痛手になる。

現状ではビジネスとして成り立っているのか。森田氏は、「ようやくトントンのところまできた」と明かす。

「ポールンロボの初代機は2005年。当初は企画イベント用に開発して、事業化を狙ったものではありませんでした。花粉情報のニーズの高まりを感じて本腰を入れ始めたのは2007年の3代目から。3代目は発泡スチロール製で、静電気で花粉がくっついて大失敗でした(笑)。2009年の4代目からまともに観測ができるようになり、ビジネスとしても本格的に展開。採算が取れるようになったのは、本当にごく最近です」

環境省「はなこさん」撤退で企業からの引き合いは増えているというが、「追い風になったうれしさより、うちはもう撤退できないというプレッシャーのほうが大きい」と気を引き締める。もっとも、「今のところ花粉観測の事業から撤退する予定は全くありません」とのことだ。

春爛漫の季節、花の咲く木の下でくしゃみをする女性
写真=iStock.com/RealPeopleGroup
※写真はイメージです

「今後はスギやヒノキ、シラカバ以外の花粉を観測できるように開発を進めます。そうすれば、別の花粉アレルギーが主流の中国や韓国でも展開できるかもしれない。まだ私の願望の段階ですが、ビジネスとして軌道に乗せて、より多くの人のお役に立てるようにしたい」

スギの世代交代が本格的に進む数十年先まで、おそらくスギ花粉の抑制は望めない。となれば、人間側の守りを固めるしかない。いま育ちつつある花粉ビジネスの生態系をきちんと維持できるかどうか。そこに花粉症の未来がかかっているといって過言ではないだろう。

【関連記事】
「琵琶湖に迷惑をかけた」上皇陛下が漁業関係者にどうしても伝えたかった"謝罪"の中身
人間の傲慢さの極地…世界遺産・奄美大島の「猫3000匹殺処分計画」はなぜ止まらないのか
「ゆるキャラ」「マラソン大会」が乱立…田舎の自治体が本気の活性化策を考えない根本原因
元凶は「発泡酒、第3のビール、飲み放題」…日本人がビールを飲まなくなった3つの理由
「取りやすいところから徹底的に取る」政府がたばこの次に増税を狙っている"ある嗜好品"【2021下半期BEST5】