不正登録者を野放しにする運営者の「言い訳」

筆者はマッチングアプリの詐欺被害者の取材を通じて、被害者が騙された時に使われた「美男美女の写真」や「自己紹介文」が、ほぼ同じ形で何度も出てくることを確認しています。被害者はそのことを運営者へ通報することもありますが、「(不正登録者が)退会されることもなく、いつまでも登録され続けていることが多い。なぜ、危険人物を放置し続けるのか」と憤る被害者もたくさんいます。

もっともなことです。野放しになっていれば、その人物による詐欺がこの瞬間にも行われているかもしれないからです。

もしかするとアプリの運営者側は次のような弁明をするかもしれません。

「おびただしい数の不正登録があり、すべての通報に対して即座に対応できない」
「詐欺行為がなされていないグレーな状況なので、そのまま放置するしかない」

これでは、だめです。怪しいものに対して、確かめる術なしでの放置。これこそがマッチングアプリを介した詐欺が横行する一因です。利用者から寄せられた情報をすぐにチェックできる態勢とノウハウを持つことこそが大事です。「グレー」な情報がもたらされた時こそ、それをいち早く確認する術をどれだけ持っているのかが被害を防ぐ鍵になります。

もし通報を受けた人物が日本に住む外国人を自称していれば、在留資格を持っているかを調べる。詐欺や性犯罪者も、同じ行為を繰り返す傾向があるので、例えば、反社会的な人物でないか過去の報道やネットで調査するなど、確認のための厳格なフォロー態勢が必要になります。こうすることで詐欺に遭う確率を下げることができるはずです。

タブレットでソーシャルメディアを使用する女性
写真=iStock.com/Vladimir Vladimirov
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多くのマッチングアプリでは、ユーザーがお互いに「イイネ」をかわしてマッチングしてから、メッセージのやりとりをして、相手と会うことになります。しかし、結婚詐欺などの騙しを行う者たちの危険が常に隣り合わせになっているとの認識を持ち、厳格な対応をしている、あるマッチングアプリ運営会社では、その逆のスタイルをとっているそうです。

例えば、最初にビデオ通話をしてお互いに顔を合わせた会話をして、双方のイメージが良いとなった場合に、マッチングとなり、メッセージのやりとりができるようになっているといいます。つまり、厳格な本人確認で登録をパスして、さらにビデオ会話を通じて当人同士が、相手がなりすましでないかの確認ができる二重の対策をとった形の出会いともいえるわけです。