入口審査をかいくぐる者を排除できない運営者も

上記で紹介したような厳格な本人確認を取り入れて運営しているマッチングアプリもありますが、まだ数が少ない状況です。それだけに詐欺に遭いやすいアプリが数多く存在しているということになります。

「本人確認において大事なことは、『名乗る側』の情報を一方的に『点』で信じるのではなく『名乗る側』(個人)と『確かめる側』(企業)が“対の関係性”でしっかりと確認することです。これはコインの表裏のようなもので、両面で取り組むことが、なりすましによる犯罪のリスクを回避できることになります」(同上)

現在、一部のマッチングアプリでは、虚偽の身分証を出しながらも、それを確かめる運営会社側の緩さがあって、簡単に登録できてしまっているのが現状です。これでは「対の関係性」になっての本人確認ができていない状況といえるでしょう。

夜の街でスマートフォンを操作する女性
写真=iStock.com/staticnak1983
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ここで、もうひとつ考えなければいけないことがあります。それは詐欺というものは、常に対策の裏をついてやってくることです。それゆえ、知能犯による手口を100%防ぐことは極めて難しいのです。2021年のオレオレ詐欺などの特殊詐欺被害総額は278億円。警察がいくら対策を施しても、なかなか減らすことができません。

そこで大事なことは、詐欺に遭わない確率を80%、90%と高くして、被害を減らしていくという考えです。これは、ネット上のなりすましによる犯罪も同じで、騙されない確率を上げて、リスクヘッジをしていかなければなりません。

今、多くの詐欺がマッチングアプリをきっかけに起きている理由には、入口の審査の甘さに加えて、入会後の対策にも不備があるためだとも思われます。

多くのマッチングアプリはどうしても登録者数を増やすことばかりに目がいってしまい、本人確認という手間のかかることを疎かにしてしまいがちです。

そこで、入会審査を巧みにくぐり抜けた不正利用者をいかに早く排除できるかの対策も必要になります。それは、利用者と運営者側の相互通行が迅速になされているかにもかかわってきます。