「注書きをよく読んでごらん」

「注書き…?あっ」

さくらは大きな声を出した。

「注2に、管理職の給与を含めた場合809万円となる、と書いてある!

平均年間給与はてっきり全ての従業員を対象にして計算されているんだと思っていたけど、監督や管理の地位にある者を対象外にしていたんだね。対象に入れると平均年収が47万円も上がるんだ!」

「その通り」

佑真はうなずいた。

「ほとんどの会社は管理職を含めた全従業員の平均給与をそのまま開示しているけど、東電のようにいったん管理職を除いた金額を開示し、後の注書きで全従業員の平均を開示する会社もあるんだ」

「なんだか紛らわしいわ。注記をつけるくらいなら最初から上の欄に含めて開示すればいいのに。注記だとそれほど目立たないし、今回のようにうっかり読み落とすリスクがあるわ。関電と中電もやっぱり管理職の分を含めていないのかしら」

さくらは関西電力の有価証券報告書を開き、今度は該当箇所を丁寧に読んだ。

「関電の場合、注書きには管理職を除いているとは書いてないわ」

「そういうときは、上の欄に含まれていると考えられるよ。通常従業員と言ったら、全員を含めて集計するからな」