公認会計士 秦 美佐子 はた・みさこ●早稲田大学政治経済学部卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、優成監査法人勤務を経て独立。在職中に製造業、サービス業、小売業、不動産業等、さまざまな業種の会社の監査に従事する。上場準備企業や倒産企業の監査を通して、飛び交う情報に翻弄されずに会社の実力を見極めるためには有価証券報告書の読解が必要不可欠だと感じ、『「本当にいい会社」が一目でわかる有価証券報告書の読み方』(プレジデント社)を執筆。他に経営に活かせる会計をテーマにした『会計士マリの会社救出(秘)大作戦!』(すばる舎)などの著書がある。

今日では情報が氾濫しています。聞いたことをそのまま鵜呑みにしないためには、有価証券報告書のような、企業が法律に基づいて正式に開示している資料を読むことが大切です。しかしながら、ただ漫然と読むだけでは、思わぬ落とし穴にはまることがあります。

第1回では、東京電力の人件費を確かめるために、従業員の状況に記載されている従業員の平均年間給与を見てきました。その結果、東京電力を同業他社と比べた場合、特別に高いというわけではないことが読み取れました。

たしかに電力業界では高い水準とは言えないが、他の業界に比べればやっぱり東電の給料は高いのではないか。年収300万円時代といわれているなかで、電力業界は恵まれているのではないか。そのように捉えることもできます。大事なのは、正しい情報に基づいて考えることです。

ただし有価証券報告書を正しくご活用いただくためには、その読み方をきちんとマスターする必要があります。読み方を誤ると思わぬ落とし穴にハマることがあるからです。その例を示すために、この回では、前回とりあげた東電の人件費についてさらに深堀していきます。有価証券報告書で開示されている従業員の年間平均給与には、一体どういったものが含まれているのでしょうか。