輸入頼みの日本が直面する厳しい現実
依然として、ウクライナで激しい戦闘が続いている。それによって、世界経済の構造が大きく変わりそうだ。1990年代初頭以降、世界経済は国境の垣根が下がる=グローバル化の流れを歩んできた。それが、ウクライナ危機によって、ロシア対西欧諸国の間で分断=ブロック化が進むことになりそうだ。米英やドイツなどのEU加盟国はロシアへの金融制裁に加え、原油などの輸入を停止あるいは削減する。
3月7日には、需給が逼迫するとの懸念から原油の先物価格が急騰した。ブロック化へ世界経済のパラダイムが変化することで、自由にモノを貿易することが難しくなる兆候が表れている。
グローバル化によって、世界に張り巡らされた供給網=サプライチェーンが遮断されはじめた。その結果、経済運営の効率性は低下し、世界的に経済成長率は低下するだろう。ロシアからの資源供給の減少によって、世界全体で構造的に物価も上昇しやすくなる。各国が緩和的な金融政策に頼った経済運営を続けることは難しくなる。
資源を輸入に頼るわが国は、かなり厳しい状況に直面する恐れがある。わが国は国全体でどのような対応策をとるべきかを真剣に考えなければならない。喫緊の課題は、経済安全保障の観点からエネルギー政策を強化することだ。やや長めの目線で考えると、経済の実力を高めなければならない。そのために、教育の強化や労働市場の改革を進めてより多くの人が新しい取り組みを進めることができる環境を目指さなければならない。そうした取り組みがどう進むかによって、わが国の将来が大きく変わるだろう。
世界経済はグルーバル化から「ブロック化」へ
ウクライナ危機の発生によって、世界経済のパラダイムが変化する可能性が高まった。それは、グローバル化からブロック化へのシフトだ。1990年代初頭以降の世界経済では、ポーランドやハンガリーなどの東欧諸国が市場経済に仲間入りした。中国は改革開放路線をあゆみ、外資企業から製造技術を習得し、豊富かつ安価な労働力を武器に“世界の工場”としての地位を確立した。ロシアは天然ガスや原油、希少金属、小麦などの穀物の主要輸出国としての役割を発揮した。それによって、世界経済のグローバル化が加速した。