6兆円強を国民が負担しても収束は「絶対不可能」

22兆円の内訳は、廃炉8兆円、賠償8兆円、除染・中間貯蔵で6兆円だが、まず、賠償8兆円のうち半分の4兆円は、関西電力や中部電力といった大手電力会社が負担する。また、2020年以降は新電力(新規参入の小売り電気事業者)も、2400億円を負担する義務が押し付けられた。さらに、除染・中間貯蔵6兆円のうちの2兆円にも税金が投入されることになった。

おそらく、大手電力や新電力も、賠償負担分は電気料金に上乗せするしかないだろうから、何のことはない、すでに22兆円のうちの6兆円強は、国民が税金や電気代の形で負担するのである。何ともバカバカしい、やりきれない話ではあるが、では残る16兆円で本当に1F事故は収束するのか。結論からいえば「絶対に不可能」と言うしかない。

電気代
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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廃炉費用8兆円の試算のベースになっているのは、1979年3月に発生したアメリカ・スリーマイル島原子力発電所事故だ。事故の詳述は省略するが、燃料の45パーセントが炉心溶融=メルトダウンし、一部が圧力容器の底に落下した。

算出方法はざっくりスリーマイル島事故×60倍

この事故をベースに、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が、有識者から1F事故廃炉でかかる費用について聞き取り調査したらしい。2016年12月9日に開かれた同機構の「有識者ヒアリング結果報告」によると、この事故でデブリ取り出しや輸送にかかった費用が9.73億ドルであったことに、以下の条件などが付加された。

①スリーマイルに比べ、1基あたりのデブリ取り出し量が最大2倍程度
②スリーマイルに比べ、デブリを取り出す基数が3基なので3倍
③スリーマイルと異なり、デブリが炉内全域に分散、大規模な遠隔操作が必要
④格納容器の閉じ込め機能が損傷しているので付属的な系統設備が不可欠

そして、報告書によると、1Fとスリーマイルとで上記の相違点をふまえつつ最大値を推測すると、おおむね25~30倍となり、これに物価上昇を考慮すると、約50~60倍程度になる、としている。そして、

9.73億ドル×100円/ドル×50~60倍程度=最大約6兆円程度

──と、めちゃくちゃアバウトに試算している。

まあ何分、前例のない事故だから、比較するものがないので「どりゃっ!!」という勢いで試算するしかなかったのだろう。そして、2016年12月の段階で、すでに東電は1F事故収束のため2兆円の「特別損失」を計上していたので、2兆円を加えて8兆円にした、ということだ。