その後、同じ作業を開始してもらったところ、休憩時間にコンクリートの屋根の画像を見たグループは集中力が8%低下し、緑の屋根を見たグループは集中力が6%高まり、タイプミスが少なくなるという結果が出ました[5]。

この結果から、メルボルン大学のケイト・リー教授は、「緑の屋根は環境に良いだけではなく、働いている人の集中力回復にもポジティブな影響を与える」と結論づけています。緑は室内なら観葉植物でも同様の効果があるとされています。

集中力を高める照明の色、阻害する色

さらに、光の色も学習のパフォーマンスに多大な影響を与えます。

照明は覚醒効果のある、昼間の太陽光に近い「青白い光」であることが重要です。夕暮れのようなオレンジ色の光はリラックス効果が高く、論理的思考が必要な場面や学習するシーンには不向きなのです。オレンジ色の白熱色の光は明らかに集中力を阻害し、学習意欲を低下させます。しかし、アイデアを考える場合、オレンジ色の光は非常に有効です。

集中力、読解力、覚醒には鮮やかな暖色系と青白い照明、創造力とアイデアが必要な場面には青とオレンジ色の照明、集中力の再生には緑、その時々に適した色を用いることが学習パフォーマンスや作業効率を高める上で有効なのです。

脳を活性化させ、仕事や勉強の効率を高めるのは青白い「昼光色」(左)。一方、オレンジ色の「電球色」(右)はリラックスを促し、創造性を高める(出所=南涼子『一瞬で心が整う「色」の心理学』)
脳を活性化させ、仕事や勉強の効率を高めるのは青白い「昼光色」(左)。一方、オレンジ色の「電球色」(右)はリラックスを促し、創造性を高める(出所=南涼子『一瞬で心が整う「色」の心理学』)

早稲田塾は20年前から「青ペン勉強法」を提唱

大人になっても仕事で人の名前を覚える、資格試験に向けた勉強など、覚えなくてはならないことが日常のなかにはたくさんあります。色の力で効率よく記憶力を高められる方法はないのでしょうか。

色と脳は密接な関係があり、記憶力を司る海馬にも影響を及ぼします。記憶力と色は決して無関係ではありません。

そうした点に着目して、いち早く色を勉強に取り入れたのが早稲田塾です。

頭がよくなる 青ペン書きなぐり勉強法』という本が話題になりましたが、早稲田塾はそれより20年ほど前からその方法を生徒に提唱していました。当時は「赤緑青<せきりょくせい>の力」として、「弱点の赤」「気付きの緑」「記憶の青」と、ペンの色ごとに定義付けをし、ノートを作る方法を推奨していました。

考案者の相川秀希さんは、効率よく「暗記モノ」を攻略できる「青ペン勉強法」は社会人の語学習得や資格勉強にも役立つ技が多いと述べています。