耳を傾ければ、相手の求めているものがわかる

全米屈指の自動車デザイナーが「自動車業界で成功するには、人々が求めているものに常に敏感でなければならない」と言い、さらに持論を展開した。

「車のデザインをしているのは、じつはデザイナーではなく一般の人たちです。デザイナーは一般の人たちの要望に耳を傾けるだけです。一般の人たちが何かを求めているとき、デザイナーはそれをすぐに提供するために努力します」

成功するには相手が求めているものを与えることが不可欠である。あなたはたえず相手の要望に耳を傾けなければならない。

よい人間関係は双方向のコミュニケーションによって成立する。それはギブアンドテイクの精神にもとづく。相手が求めているものがわからなければ、相手の心をつかむことはできない。

相手が何を求めているかは謎ではない。私たちはよく「相手が何を求めているかがわかれば、対処の方法があるのに」と悔しがるが、相手が求めているものを見極めるのはそんなに難しいことではない。

全米販売協会のアル・シアーズ理事長は、こう言っている。

「すべてのセールスマンは見込み客の要望を見極める能力を持っている。相手の言うことに耳を傾ければいいからだ。そうすれば、相手はそれを教えてくれる。問題は、相手の話をさえぎって自分の意見を言ってしまうことだ」

状況によっては、自分の手の内を明かさずに相手の思惑を探る必要がある。多くのビジネスの取引で使われる戦略は、自分の要求を言わずに、相手が求めているものを探り、どうすれば相手を満足させられるかを見極めることだ。ここで肝に銘じるべきことは、自分がうっかりしゃべりすぎると手の内を悟られてしまうことである。

一流のビジネスマンは相手の手の内を読む不思議な力を持っていると考えられているが、それは実際には「不思議な力」ではない。

一流のビジネスマンは自分の口を閉じて、相手に話させるように仕向けるのがうまいだけである。彼らは精神分析学の父フロイトの科学的見解を直感的かつ経験的に知っているのだ。人間はずっと話をさせられると自分の本心をごまかせなくなる。一生懸命に隠そうとするかもしれないが、どうしても本音をしゃべってしまうのだ。じっくり耳を傾ければ、相手が無意識に自分の本音をあらわにしていることがわかる。

話し合いに臨む男女
写真=iStock.com/kazuma seki
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