地方やベッドタウンで空き家がどんどん増える
こんな状況ですから、ホテル開発がなくなれば、やや価格を下げた形にはなるものの新築マンション用地に生まれ変わるだけ。もとに戻るだけです。そもそも首都圏の新築マンション発売戸数は2000年代前半に8万戸台だったところ、2020年は2.7万戸にまで減少してきましたが、ホテル用地取得と競合し、負けてきた影響も大きいのです。
全国一律で不動産市場が好調かというとそんなことはまったくありません。国土交通省が発表した2020年の新設住宅着工戸数は、持家、貸家及び分譲住宅のすべての分野で減少し、前年比9.9%減少となっています。アパートなど貸家に対する金融機関の融資姿勢が厳格化していたところに新型コロナの流行が一層の下押しとなった格好と言えますが、好調なのは概ね大都市に限られているわけです。
1990年のバブルピーク時に167万戸だった全国の新設住宅着工も、今となっては80万戸台前半と半分以下。さらに野村総合研究所の試算によると2040年には46万戸と、40%以上減少することが予想されています。
また全国の空き家は2038年に2000万戸を遥かに上回る可能性があるとのシンクタンクの試算もあるように、今後、地方やかつてベッドタウンと呼ばれた都市郊外において、築年数が古く、駅から遠く、ニーズのない空き家の大幅増加が見込まれています。周囲に空き家が増加すれば景観を阻害し犯罪の温床になりかねないなど、ますます人を寄せ付けない悪循環となります。
オフィス需要は見通ししづらい
オフィス需要がどうなるかは実はまだよくわかりません。IT系など完全リモートワークがしやすい業種はいち早くオフィスを大幅縮小する、中には完全になくすといった動きも見られました。こうした動きは派手に報道されるため目立ちましたが、全体としては限定的でした。
一方でリモートワーク(在宅勤務)が進展するにつれ、出社人数が例えば従前の半分~7割程度でよいと気がついた企業は多いでしょう。しかし、たとえ出社人数がかつての半分であったとしても、いわゆる「密」を避けるため、2メートル以上離れて着席するといった対策を講じている企業も多く、そうなると意外とオフィスの必要床面積は減らない可能性もあります。
いずれにしても、即座に移転などの行動に出ている企業は限定的で、コロナを受けた新しい運用を模索しながら様子見をしていたのが、そろそろ業務の効率・生産性などを勘案しながら、自分たちのスタイルを決定していくものと思われます。2022年から一定の動きがあるかも知れません。