家を売るとき、どんなことに気をつければいいのか。不動産コンサルタントの長嶋修さんは「賃貸に出す方法はあるが、これはハードルがとても高い。持ち家を売るにはいくつかのコツがある」という――。

※本稿は、長嶋修『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)の一部を再編集したものです。

新興住宅地
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家が下位15%のランクなら即座に処分

コロナ禍という社会の激変期や、やがて訪れる新しい社会を見据えて、筆者によくいただく典型的な質問は「何に投資したらよいか」というものです。

不動産の場合、以下の3極化の構図のうち、どこに当てはまるかで戦略は異なります。

三極化の構造

まず下位15%の「無価値化・マイナス価値化不動産」については、不動産だけの相続放棄はできないので、基本的には即座に処分したほうがよいでしょう。身もふたもない話になりますが、カネばかりかかって将来性がないためです。

このような不動産のために、2023年には新制度「相続土地国庫帰属制度」が利用できる予定です。これは簡単に言えば「土地を手放せる制度」ですが、実はあまり使い勝手がよくありません。まずあくまで「土地を手放せる制度」ですから、建物が建っていれば自費で解体する必要があります。

木造2階建て・30坪程度の建物なら150~200万円。重機が入らないなど道路が狭いところなどではもっとかかります。土壌汚染や埋設物がないのも前提となり、例えば井戸や浄化槽があれば撤去しなければなりません。そのうえで審査手数料を支払い、10年分の土地管理費相当額も支払ってやっと手放せるのです。10年分の管理費は、市街地の200平方メートルの宅地で約80万円です。

のんびりしているとますます処分できなくなる

簡単に言えば、固定資産税や維持費が負担であれば、価格がゼロでもマイナスでも即座に手放してしまったほうがいいでしょう。「もっとかんたんに土地・建物の放棄ができる」といった法案成立や改正に期待するなら、もう少しそのままでいいのかも知れません。いずれにしても、あまりに制度設計を緩和すると、国が引き取る制度がゴミ回収のようになってしまい、収集がつかなくなることを危惧している、といった前提は理解しておく必要があるでしょう。

中位70%の「ダラダラ下落する不動産」も、時間の経過とともにその価値は下落していくわけですし、建物が空き家の場合、そのままにしておくとどんどん傷み、ますます売る・貸すなどの処分が難しくなりますので、できれば1秒でも早く売却したほうがいいのです。のんびりしていると周辺にどんどん空き家のライバルが増え、ますます処分できないというスパイラルに。将来、そこに自分たちや親族の誰かが住むといった予定でもない限りは、早めの処分をおすすめします。

とはいっても「相続で揉める」「思い出が残っている」といった感情的・情緒的理由が多分に含まれるのが不動産だという側面はよく理解しながら、あくまで経済合理性にのみフォーカスしてお伝えしていますことをご了承ください。