「背番号が38なので、中間の3800万円にしていただけませんか」

ところで、年俸の「アップ・ダウン」はどのように決められるのか。契約更改交渉における球団サイドの出席者は球団代表・査定担当・経理部長の3人のことが多い。額決定までのプロセスはやぶの中だが、ある選手からこんな話を聞いたことがある。

ベースボールチーム
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「自分の背番号が38なので、中間の3800万円にしていただけませんか。来季頑張るモチベーションが上がりますからと言ったら、その通りになったよ」

希望額が4000万円なのに対し、提示額が3500万円だったのだ。

また「同じレベルの他球団選手の契約更改が終わってから、それを参考に交渉に臨む。1度保留すれば、200万円上がるのなら、交渉はあとのほうがいい」と言った選手もいた。

筆者はかつて「このポイントをアピールすれば年俸が上がるよ」という資料を作って、親しい選手にプレゼントして喜ばれたことがある。打者なら「同点打の回数」、投手なら「僅差での登板数」。打者にとって敗戦を回避する同点打は貴重だし、投手は打たれた抑えたの結果も大事だが、その僅差の場面を任されたことに意義があるからだ。

メジャーでは代理人交渉は常識だが、日本でも00年シーズンオフから運用された。それは1992年オフに古田敦也(ヤクルト)が「代理人交渉」を希望したことが契機になった。現在、代理人は、「選手1人につき、1代理人」。契約更改を仕事にするブローカー的な人間が現れないよう、代理人は弁護士資格を持つ者に限られる。

契約更改交渉を担当していた某球団職員は、年俸額決定の難しさをこう話す。

「例えば、年俸2000万円の若手選手と、(もともと本塁打・打点が多かった)年俸1億円のベテラン選手が初めて打率3割をマークしたとき、2000万円の選手を100%アップさせると4000万円。1億円の選手を20%アップさせると1億2000万円。年俸に応じて一見、公平のように感じますが、そもそも何を基準に100%と20%アップするのか。アップ率のフォーマットを作ろうと思ったが、各選手ともそれまでの実績や打順が違うので、一律にあてはめるのは難しい」

現在、球団が年俸ダウンしていいのは「年俸1億円以上の選手の場合は40%まで」「年俸1億円以下の選手は25%まで」という規定になっている。それと同じようにアップ率に関しても「年俸1億円以上は25%まで」「年俸1億円以下は100%まで」とすればいいのかもしれないが、それでは夢がなく、メジャー選手との差はますます広がるばかりだろう。