保護者を安心させるはずの保育所が不安材料に

(3)保護者の不安感

マスクを着けることに対して、社会的にもいろいろな意見や思いがあります。また中には着けにくい子どもたちや、何かしらの理由により着けることのできない子どもたちもいるでしょう。それら多様な環境下において、保護者からもさまざまな想いや意見が寄せられるでしょう。またそれらに保育者の対応が求められますし、保護者自身もそれら賛否両論の中で意見が分かれたり、不必要な不安を覚えるかもしれません。

保育の営みは保護者に安心を持っていただいて、初めて成立するものです。その保育所がマスクに対する取り扱いによって、保護者を不安にさせてしまう可能性もあるのです。保育の営みの根幹に関わることだと感じます。

「単なる子守り」ではなく「エッセンシャルワーク」

このような視点で考えると2歳児にマスクをつけること自体が、かなり困難な状況であると言わざるを得ません。政府分科会で案が出たときに、委員や周りの人たちから疑問や反対を唱えることはなかったのでしょうか。あるいはリアルな「2歳児」を知っている人がいなかったのでしょうか。このような事案から、子どもの声が直接届かないさまざまな政策や方向性を考える契機としたいです。

走り出す園児たち
写真=iStock.com/paylessimages
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コロナ禍において保育所のありさまが大きく取り扱われて、報道される機会が増えてきました。それまでほとんど聞かれることのなかった「エッセンシャルワーカー」に保育士も含まれ、医療従事者と同様にさまざまな感謝が伝えられたり、ワクチンの優先接種の職種に加えられてきました。

これまで保育所の保育は「単なる子守り」というように、とても社会的地位の低いものでした。それが今回のコロナ禍において、その役割や業務が大きく社会にインパクトを与えました。保育は単なる「子守り」や「子育て」のみではなく、この社会全体を支えている社会インフラの一部なのです。他のライフラインと同様にこの社会になくてはならないものです。「ガス・電気・水道・保育」といえるでしょう。