三大中華街と異なる「池袋チャイナタウン」の特徴

世界各地のチャイナタウンを比較検討してみると、チャイナタウンは基本的には、周辺地域に居住する華僑の生活を支える店舗や団体などが集まった地区である。

日本の場合、日本三大中華街と呼ばれる横浜中華街、南京町(神戸)、長崎新地中華街は、いずれもそれぞれの都市の重要な観光名所となっている。

このため、日本の社会では「中華街=観光地」というイメージが強い。

そこで私は、この街をこれまでの「中華街」と違うものと捉え、「池袋中華街」ではなく「池袋チャイナタウン」と呼ぶことにしたのである。

最近は、新聞、テレビ、インターネットなどを通して「池袋チャイナタウン」が社会的にも認知されてきており、日本化されていない「本場の中国料理」を味わいたいという日本人も多く訪れるようになった。

特にランチタイムには、池袋周辺で働く日本人が600円台、700円台の各種の定食を求めてやってくる。

 
写真=iStock.com/winhorse

2016年の時点で中国関連の店は約200軒

2016年の私の調査では、池袋駅北口周辺を含む池袋駅西側だけで新華僑(一部少数の老華僑を含む)関係の店舗、オフィスが合計194軒あった。

その内訳をみると、中国料理店63軒、美容院・エステ31軒、旅行社9軒などとなっていた(山下清海、二〇一六年)。

池袋駅北口は、東武鉄道により2019年3月から「池袋駅西口(北)」という名称に変更になった。しかし、新華僑に限らず多くの日本人も、慣れ親しんだ「池袋駅北口」という呼び名を使っている。

新華僑にとって「池袋駅北口」はブランド

中国人は日本人に比べると、はるかに起業精神が強い。特に新華僑にとっては、「いずれ自分も池袋駅北口に自分の店をもちたい」と思いながら、後述する埼玉県の西川口、蕨をはじめ他の場所で一生懸命頑張っている。

そのような中から、念願かなって池袋駅北口に自分の中国料理店を開業した例は数えきれない。新華僑にとって、「池袋駅北口」のブランド力は相当なものである。

1990年末に15万339人であった在日中国人は、2020年6月末には84万6764人にも増加した(法務省在留外国人統計、台湾を含む)。

そこで、新聞・テレビなどメディア関係者から私がよく聞かれるのは、「池袋チャイナタウンのようなニューチャイナタウンは他にないのですか」という質問である。