違法性風俗店のメッカだった西川口

池袋のある豊島区や新宿区などに単身で住んでいた新華僑は、結婚して家庭をもつと、より広い居住スペースを求めて赤羽や王子などの北区から、さらに東京都と埼玉県の境界である荒川を越えて埼玉県南部の川口市や蕨市などに移り住む者が多い。これが新華僑の郊外化である。

西川口駅の駅名標
西川口駅の駅名標(写真=LERK/CC-BY-SA 4.0/Wikimedia Commons

JR西川口駅の西口周辺は、1990年代から違法な性風俗店が集中し、最盛期には200軒を超えるほどであった。しかし、2004年、埼玉県警はこの地区を風俗環境浄化重点推進地区に指定し、違法な性風俗店を摘発し、2007年頃までに、ほとんどの違法な性風俗店は廃業に追い込まれた。

これに伴い、近隣にあった飲食店なども客が減少、西川口駅西口周辺は衰退し、雑居ビルも空きテナントが目立った。

西川口駅は都心までの交通アクセスがよく、上野駅までは約23分、池袋駅へも赤羽駅乗換で約24分である。

しかし、前述したような「西川口」のマイナスの地域イメージにより、空きテナントを埋めることは容易ではなかった。

なぜ西川口がニューチャイナタウンとなったのか

新華僑にとって、西川口の地域イメージは、日本人に比べると、それほどマイナスではなかった。都心へのアクセが良好な割に、駅周辺の空きテナントやマンション、アパートの賃料はリーズナブルであった。

起業精神に富む新華僑にとって、東京で中国料理店を開業するよりも、西川口のほうが資金は大幅に少なくてすむ。そのため2000年代に入った頃から、西川口には中国料理店が少しずつ増え始めた。

2020年11月の私の調査によれば、西川口駅の東西400メートルの範囲内に、中国料理店が33軒、中国食品店4軒、ほかにカラオケ店、美容院、マッサージ店、不動産屋など、合計44軒の新華僑経営の店舗が認められた。

西川口チャイナタウンの大きな特色は、他では味わえない本場中国の料理メニューを提供している店が多いことである。