一番売れているのは「10分テープ」

現在は、全盛期に比べ需要が減っていることもあり、同社が販売しているカセットテープは「UR」シリーズのみとなっている。

それも、カセットテープ全盛期に見られた150分や120分のテープは取り扱っておらず、90分から10分までの4種類のタイムバリエーションで展開しているそうだ。

「全盛期に比べてカセットテープの需要が見込めなくなったことで、品質の高いテープ原反の入手も難しくなっており、現在は90分、60分、20分、10分と4種類のタイムバリエーションに絞っています」

そんななか、4種類の長さのうち「10分テープ」が意外なニーズにはまって一番人気を誇っているという。

それがシニア世代を中心としたカラオケ需要だ。

「カセットテープが登場した頃は、60分や90分が主流でしたが、1980年代にカラオケブームが盛り上がりを見せ、その需要に応えるために10分のカセットテープを発売しました。歌を練習するのに、10分という長さはちょうど良く、さらには巻き直しも楽なのでカラオケの練習に都合がいい。その名残が今でもあるため、シニア世代を中心に10分テープが最も多く売れているんです。また、テープレコーダーも再生ボタンを押すだけのシンプルな操作で手間いらずなので、スマホなどの最新機器に慣れていないシニア世代でも使いやすいというのが、支持されている理由だと考えています」

マクセルがこれまで発売したカセットテープの数々。
写真提供=マクセル
マクセルがこれまで発売した歴代カセットテープのラインナップの一部。現在は手前の「UR」シリーズのみの販売となっている

「ニッチな需要」に応え続けたい

そのほか、英会話の勉強やカラオケ大会へ提出する際のデモ音源など、シニア世代の勉強や娯楽目的に10分テープは有効活用されているという。

しかし、コロナ禍の影響でカラオケの需要が減っていることもあり、苦しい状況に立たされているのは否めない。

三浦さんは「新型コロナウイルスの影響で生活様式も変化し、直近では復調の兆しが見えてきているので、これからもできるだけニッチな需要に応えられるようにビジネスを継続していきたい」と話す。

カセットテープ自体は全盛期ほどの勢いにはないものの、近年の「昭和レトロ」ブームや70~80年代に流行した「シティ・ポップ」が再評価されていることで、若年層にもカセットテープの“真新しさ”が注目されてきている。