教師だけでなく、「師業」「士業」の多くは同じ道をたどる。医師、弁護士、会計士などの高給なプロフェッショナル職種は、専門的な知識を多く知っていることに価値があったが、サイバー社会では知識や判断はAIに勝てない。

米国やカナダの弁護士は、裁判の戦術がすでにAI化している。「このケースでは、ここを攻めて、ここは守れ」といった指示がAIから出されるのだ。若い弁護士とベテラン弁護士の差はほとんどなくなった。AIの活躍は、医師や会計士でも起き始めている。

見えないものを見る力

シンギュラリティが予測される45年は、いまの小学生たちが30歳前後で働き盛りの頃だ。文科省の指導要領は、シンギュラリティなど想定せず、記憶に偏重したカリキュラムのままだ。スマホで検索すれば数秒でわかることを覚えさせ、試験ではスマホは使用禁止で、自分の記憶が頼りだ。社会に出てから役に立たないことを頭にたたき込んでいる。

サイバー社会で“飯のタネ”になるのは、人間にしかできないことに限られる。コンピュータは記憶(記録)や大量の情報処理は得意だが、「0から1」の発想は苦手だ。従って、見えないものを見る力、構想力が鍵だ。

ただし、AIに勝つのは40人に1人くらいで十分だろう。あとの39人は、AIに勝った天才が納めた税金で生活する。普段の仕事は、介護や看護、ハンディキャップがある人の支援など、エッセンシャルワーカーとして社会的な役割を担う。

シンギュラリティで失業しない仕事はほかにもある。日本人が得意とするスポーツや芸術などの分野は、AIには真似できない。たとえば、海外のオーケストラやバレエ団では、日本人が数多く活躍している。料理人も世界中にいる。世界の上位に日本人がいるのは、観るもの、聴くもの、味わうものなど感性が発揮される分野だろう。

起業や経営にも構想力が求められる。ビジネスの構想力を鍛えるのに最も効果的なのは、起業家の話を聞いて刺激を受けることだ。ヤマハの川上源一さん、YKKの吉田忠雄さんなどの起業家の本を読むのもいい。

サイバー経済の世界は、正解がない。政府は国民の邪魔をしないように、規制を撤廃するのが仕事だ。政府がいう「新しい資本主義」は絶望的に時代錯誤な政策なのだ。

(構成=伊田欣司 写真=時事通信フォト)
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