「80代は6割」加齢とともに急速に増える介護需要

医療の次に、介護に関する問題を見ていきましょう。日本の介護保険制度は、介護が必要になった人に社会保険でその費用を給付する仕組みで、2000年4月に始まりました。増加する高齢者の介護を社会全体で支える「介護の社会化」を図ることをその最大の目的としています。

冒頭でも少し触れましたが、その財源の半分は公費で、残りの半分は40歳以上のすべての人が負担する保険料です。被保険者は65歳以上の第1号被保険者と、45歳以上64歳以下の第2号被保険者です。給付を受けられるのは要支援・要介護の認定を受けた人です。

介護は誰にでも、またどの家庭にも起こりえる課題ですが、加齢とともに急速に介護が必要となる人は増えていきます。65歳以上の被保険者について、要支援・要介護の認定を受けた人の割合を見ると、65~69歳で要介護等の認定を受けた人は2.9%ですが、75歳以上になると認定率は32.2%まで上昇します。さらに年を重ね、85歳以上になると、約6割の人が認定者となります。

いったい誰が介護を担うのか

また、誰が介護をするのかという問題も深刻です。要介護等認定者の増加に伴い、介護に従事する職員数は増加傾向にあります。介護保険制度が始まった2000年には54万9000人でしたが、2019年には210万5000人と約3.8倍となっています。

しかし、厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、介護者の5割強は同居している家族、そのうち65%が女性となっています。しかも最近では、要介護者の受け皿となる施設が不足しているため、在宅介護へのシフトが進んでいます。

そのような中、問題となっているのは介護者の就業です。家族内に介護を必要とする人がいるため、その介護にあたる人の就業が妨げられるというものです。就業者のうち、家族の介護をしている人の割合を見ると、介護をしている人は627万6000人で、そのうち有業者は346万3000人でした。有業者全体で介護をしている人の割合は5.2%となっています。

宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来』(PHP新書)
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年齢別にみると、40代前半までは4%未満と高くないものの、50~64歳ではその倍に近い約1割となっています。先ほど、75歳以上になると要介護・支援認定者になる高齢者が増えるというデータをみましたが、50~64歳というのは、その親がちょうど75歳以上になる年齢層であり、この年齢層の有業者で介護をしている人が多くなるのは納得がいく数字です。

総務省統計局「平成29年就業構造基本調査」によると、介護・看護のための離職者数は2007年には14万5000人でしたが、2012年に10万1000人、そして2017年に9万9000人と減少傾向にあります。離職者のうち、介護・看護のために離職した人の割合も、2007年には2.2%でしたが、2017年には1.8%まで低下しています。現在、介護や看護を理由とした離職者は増加傾向にあるわけではありませんが、介護が就業を抑制するという研究結果もあり、今後、要介護等者が急増する中では注意が必要です。

そのほか、介護における問題については、老々介護、ダブルケア、孤独死といった問題も取り上げられています。今後、介護を巡る問題はより一層、深刻さを増すことが予想されます。

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