平均入院日数16日は先進国の中で突出して長い

ここで、世界と比べた日本の医療の特徴について、把握しておきましょう。まず特筆すべきは、その病床数(ベッド数)の多さです。OECD諸国における人口1000人当たりの病床数について、日本は最も多い12.8床となっています。

これはOECD平均である4.4床の2.9倍であり、医療提供体制が充実しているとされるドイツでも、日本の約6割となっています。他の先進国ではこの30年間で病床数は大きく削減されました。日本も減少傾向にあるものの、その減少幅は小さく、他の先進国と比べて病床数が圧倒的に多いのが現状です。

手術後、ICUのベッドで眠る男性
写真=iStock.com/SetsukoN
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また、入院日数が長いのも日本医療の特徴です。日本での平均入院日数は16日となっていますが、これはOECD諸国のなかで突出して長く、OECD平均の6.5日の2.5倍となっています。病床数と同様に、多くの国では1990年代初頭から入院日数は減少してきました。日本も1990年代半ばには、入院日数は30日以上で、現在はその半分程度となりましたが、それでも他国と比較すると長くなっています。

近年増加傾向だが医師の数はまだまだ足りない

病床数が多く、入院日数が多いことは何を意味するのでしょうか。それはつまり、病床数当たりの医師が不足していて、サービスが手薄になり、その結果、入院日数が長くなっていると考えられます。実際に、日本ではベッド数はOECDの中で一番多いのに対して、人口1000人当たりの医師数は2.5人で、OECD平均の3.5人を大きく下回っています。

結局、医師の数が少ないことは、先に述べた医師の長時間労働・過重労働問題にもつながっています。現在、医師数は増加傾向にあり、アメリカ(2.6人)やカナダ(2.8人)に近づきつつありますが、ベッド数が多いことを考慮すると、まだまだ他の先進国よりも少ないと言えるでしょう。