「円安」が値上げラッシュに追い打ちをかけている

3つめの要因が「円安」です。昨年の1月、1ドル=104円だった為替相場は2022年1月には1ドル=115円まで10円以上も円安に振れました。簡単に言えば、海外から買う物の価格が為替の影響だけで10%値上がりしたことになります。アメリカの小麦や大豆にしても、インドネシアのコーヒーにしても、サウジアラビアの原油にしても、もともと「物不足」「原油高」の影響を受けて世界中で値上がりしている。そこに日本ではさらに「円安」が加わって家計に厳しい状況が生まれているのです。

足元の円安の動きは、日銀とアメリカの連邦準備銀行(FRB)の金利政策の違いから生まれています。アメリカではアフターコロナに向けて、金利を上げて加熱経済の引き締めをはかろうとしています。一方で日本は政府が国債をじゃぶじゃぶ発行している関係で金利を上げることができない。そこでグローバルにドルを買って円を売る流れができてしまい、円安が起きたのです。

世界通貨レート
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2020年代の日本では「円安」が悪者になる

ここで考えなければいけないのが、日本では今や「円高」よりも「円安」が悪者になりはじめているということです。過去10年では東日本大震災の後に1ドル=79円という円高が起きて「日本経済の復興に悪影響を与える」と超円高が禍の元であるかのごとく取り沙汰されました。自動車などの輸出産業では、為替が1円だけ円高に進んだだけで1社あたり100億円の利益が吹き飛ぶといわれるからです。

ところが2020年代に入り、日本は輸出依存よりも輸入依存度が高まりました。多くの商品分野では製品の輸入依存度が25%、かつて日本が強かった家電商品にいたっては35%まで輸入に頼るようになってきています。そうなると状況は逆で、円安こそが悪者で、円安が進むと家計が圧迫されるという新しい問題の方が問題視されるようになってきているのです。