今は「悪いインフレ」が起きている

さて、この3つの要因から生まれた値上げラッシュは、経済学で言う「悪いインフレ」です。

かつて安倍政権がアベノミクスで掲げてきたデフレ脱却は、労働者の給料が上がることでいいインフレが起きて、経済が回復しながら物価が上がっていくことを目指していました。ところが今起きていることは逆で、給料が上がらず、ないしは雇用が失われて収入が減っているにもかかわらず、物価だけが上がっている。これを経済学ではスタグフレーションといって、庶民の生活にとっては最悪の状況です。

1973年にオイルショックが引き金で起きたスタグフレーションは我が国が経験した最悪のインフレです。突然いろいろな商品価格が1.4倍から2倍ぐらいの幅で引き上げられて、多くの家庭が本当に生活に必要な商品以外は買うことができないといった状況に追い込まれました。

今起きている値上げラッシュは、スピードはオイルショックのときと比べると非常に緩やかなのですが、起きているメカニズムと向かっている方向は同じスタグフレーションであることは間違いありません。違いは急激に経済が大不況に陥るのか、それとも家計が真綿で首を絞められるようにゆっくりとゆっくりと苦しくなっていくかの差なのです。

値上げラッシュは長く続く可能性がある

今回の値上げラッシュのうち、工場再開のタイムラグで起きた物不足が原因のものは夏頃までには解消されるでしょう。農作物などコモディティ価格の上昇も1年後には落ち着いている状況を期待していいと思います。

一方で脱炭素が進む以上、原油高は続くでしょうし、今の日本経済を前提に考えると長期的な円安傾向はこれからも続きそうです。このメカニズムを前提にすると値上げラッシュは1月から4月にかけて起きるイベントではなく、その先も長く続く可能性がある。その前提で自衛策を考える必要がどうやらありそうです。

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写真=iStock.com/shironosov
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