農作物の世界的な価格上昇が起きている

そのような物不足は工場であれば数カ月で回復するかもしれませんが、実は今問題になっているのは世界的な農作物の価格上昇です。新型コロナの影響で、農業も20年、21年と世界的に活動が抑えられてきました。いざ経済が回復しようとしたら農作物の数が足りない。ですから小麦粉、油からコーヒーまで農作物の価格が世界的に上昇します。

これが工場の製品とは違って数カ月ではなく1年は続くことになります。食肉の値上がりも同じで、畜産農家ではコロナで需要が減って減産したうえに、飼料となる穀物の国際相場が値上がりして生産コストが上がってしまいました。これから出荷される肉の価格は上昇せざるをえないのです。

肉用牛
写真=iStock.com/PamWalker68
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「原油高」の背景は政治的なもの

さて2番目の要因の「原油高」についても状況は深刻です。都内のガソリン価格は1リットル=167円まで値上がりしています。世界的に石油の需給がひっ迫しているのですが、その原因をひとことで言えば、産油国が必要以上に石油の供給を絞っているのです。おそらくその理由は政治的なものです。

現象面としては先進国中心に「石油が足らないので増産してほしい」と産油国に要請をするのですが、産油国側がなぜか増産に前向きにならない。ヨーロッパ諸国はロシアからのパイプラインに頼っている国も多いのですが、なぜかパイプラインからの供給が滞ったりもするといったことが起きています。

2020年代に「第3次オイルショック」が起きてもおかしくない

公式な理由説明とは裏腹に、おそらく真実は産油国全体が脱炭素の流れに反対だということだと思われます。このまま先進国の思惑通りに進めば、2030年には世界の石油の使用量は半減し、2050年には石油に依存しなくてもいい未来がやってくる。そうなる前に、脱炭素の動きに対して何らかの歯止めが必要だと産油国が考えるのはおかしな話ではありません。産油国それぞれの思惑が異なっても、行動としては原油の減産が起きるのは自然な帰結といえるでしょう。

これまで2度、1973年と1979年にオイルショックが起きていますが、もし産油国が今以上に足並みをそろえて脱炭素に対抗しようとしたら、2020年代に第3次オイルショックが起きるかもしれません。そこまでにはいかないにしても、原油高は工場やオフィスの光熱費コストの上昇と、プラスチックなど石油由来製品価格の上昇という形で、物価高に大きな影響を及ぼすことになります。