使命感を持つとやる気の次元が変わる

【宮口】それで、病院に来ない非行少年たちはどうなっているのかを調べたところ、一部は医療少年院という施設に入っていることがわかりました。その実態を知りたくて医療少年院に勤めるようになりました。

養老孟司『子どもが心配』(PHP研究所)
養老孟司『子どもが心配』(PHP研究所)

そこで、簡単な図形の模写ができないなど、認知機能の低い少年たちに出会いました。「丸いケーキを3等分するには、どう切ればいいですか?」と問われて、ベンツのマークのように扇形に切り分けず、まず縦に半分に切ってしまうような少年たちです。私は衝撃を受け、彼らが非行に走ったのも、一因に認知機能に問題があって授業を理解することができず、学校に嫌気がさしたからではないかと考えるようになりました。

このときに、スイッチが入っちゃったんですね。「認知機能に障害があるのに気づかれずに非行化する子どもたちが、予備軍も含めてたくさんいる。この子たちを何とかしなくちゃいけない。そのために自分は生まれてきたんだ」という使命感が湧いてきたのです。使命感を持った瞬間、「やる気」の次元がぐっと上がった気がします。

【養老】コーリング――呼ばれたんですね(英語の“calling”には「天職」という意味がある)。

【宮口】ああ、そうかもしれません。使命感のようなものが見つかった私は、ある意味ですごく幸せだと思います。

【養老】見つからないのが普通でしょうね。宮口先生にとっていまの仕事は、天職なんだと思います。

【関連記事】
メンタル不調のときにまず食べるべき最強で手軽な「うつぬけ食材」
「親が低年収だと、子は学力だけでなく運動能力も低くなる」最新研究でわかった残酷な現実
デジタルじゃダメ…「8割超の東大生の家にあった」意外なアナログ製品
「塾の成績がほぼ最下位から1位に」3カ月で急成長した小6の親が送り迎え中にした"ある会話"
「学校に行きたくない」子供がそう言い出したときに用意しておきたい"就職先の話"