配偶者の「不貞」について法的責任はどこまで認められるのか。弁護士の森公任さんと森元みのりさんの共著『妻六法』(扶桑社)より、「貞操義務違反」について紹介しよう――。(第2回)
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夫婦間の裏切りは民事上の不法行為

信頼していた夫が、自分とは違う人と知らないところで愛を育んでいた。

愛する人の心変わりや裏切りによるショックや怒り、いま自分が育む家庭がどう変わってしまうのかという不安で、多くの人はいても立ってもいられない心境になるはずです。

心が張り裂けそうな状態で、冷静に現状を把握することは難しいかもしれません。

しかし、夫の不貞が判明した後、自分が選んだ決断をよりよい形で進めるためにも、不倫に関する法的な解釈をぜひ知ってほしいと思います。

愛する人に裏切られた。その気持ちは、本当に耐え難いものだと思いますが刑法には不倫を罰する法律はありません。

しかし、配偶者以外の人と性的な関係を持つことは、夫婦の関係を損なう大きな要因になり得ます。そのため、夫婦には、「貞操義務」という、配偶者以外の人と性的関係になってはいけないという義務があります。

夫婦に貞操義務がある以上、民事上は、不貞は夫婦間の貞操義務違反となり、あなたの受けた精神的な苦痛は、配偶者には貞操義務違反として、不倫相手には配偶者の貞操義務違反行為に加担した不法行為として、慰謝料の請求ができます。

傷ついた心はお金で回復できるものではありませんが、慰謝料の請求は、相手を罰するという意味であなたが行使できる権利です。

なお、民法には、夫婦間の貞操義務を明記した規定はありませんが、民法第752条の夫婦間の協力扶助義務、民法732条の重婚の禁止、民法770条1項1号に不貞が離婚原因と規定されていることから、夫婦は相互に貞操義務を負うことを当然の前提としていると解されています。

では、法律的に「不貞行為」だと考えられる条件とは、どんなものでしょうか。