誰もいない実家に電話がかかってきても取る人もいないが、今後の何かのときに電話番号が必要になるかもしれないと思い、解約はせずに付帯サービスを1つずつ外していった。父名義のプロバイダーの解約には私の免許証をファクスで送る必要があり、近くのコンビニまで行ってコピーして送るという手間も生じた。後日送られてくる専用の封筒を使ってルーターを送り返すという作業も必要だった。
自分の稼ぎを切り崩す覚悟を決める
NHKには、実家が無人になりテレビを見る人がいないことを電話で告げるとあっさりと解約が認められた。新聞は父の葬儀の日に止めてもらっていたが、無料のタブロイド新聞が数種類、郵便受けに押し込まれていたので、1つひとつ電話して配達を止めた。
固定資産税はどうすることもできない。また、父の車は廃車処分したものの、故郷では車がないと生活できない。私が帰省するときのために母の車は残しておき、自動車税や任意保険もそのままにしておくしかないだろう。
こうやって細かく整理していったがやはり実家を維持するのにある程度の費用は覚悟しておかないといけないようだった。この時点でまだ母の遺族年金がいくらもらえるかはわかっておらず、私は自分の収入からの補填をひそかに覚悟した。
数日かかって今後の実家にかかるお金の精査と解約や変更などの手続きを終えると、次に気になり始めたのが相続についてである。こんなことになるまで自分が相続の当事者になるとリアリティーを持って想像したことがなかったので、本当に何も知らないのだった。
古い土地の権利証で判明した新事実
噂に聞く相続税を払わなくてはならなくなるのだろうか。調べてみると相続税の基礎控除というものがあることを知った。基礎控除額の計算式は3000万円+600万円×法定相続人の数。法定相続人は母と私なので、相続財産が4200万円までは相続税はかからないことを知った(2021年7月1日現在)。
父は大した流動資産を残しておらず、到底その金額に届くような現金は残っていない。おまけに生命保険にすら入っていなかった。
残る資産は不動産である。金庫の奥から昭和の時代の古い登記済権利証書を引っ張り出して見てみたところ、建物は父の名義だったが、なんと土地は母親のものだということがわかった。代々の土地を、若い頃に祖父から贈与されていたのだ。