もうひとつの変化は、荒川さんや浅田さんに憧れて「スケートをやってみたい」とスケートリンクに立ち寄る子どもが圧倒的に増えたことです。本来ならば、サッカーや野球、水泳など他のスポーツを始めていたであろう子どもたちがフィギュアスケートを習い始めたことで、身体的能力が高く、スケートの資質がある子どもを集め、有力選手に育て上げることが可能になりました。

スポンサーの獲得、そして、有望な子どもたちがスケートを始めたこと。これらが荒川静香、浅田真央に次ぐ日本のスター発掘につながり、日本をフィギュアスケート大国に押し上げたのです。

「欧米との文化の壁」を壊したコンテンツの平等性

また、先ほどお話した、「欧米との文化の壁」が低くなってきたことも、日本がフィギュアスケート大国に成長したひとつの理由でしょう。インターネットや電子機器の発達により、世界の人々が同じ文化にアクセスしやすくなり、世界中で同じコンテンツが流行するという状況が当たり前になっています。フィギュアスケートでも伝統的なクラシック音楽だけでなく、映画音楽など、世界中で流行っている選曲が増え、表現できる世界観の幅も広がりました。

佐藤有香『スケートと歩む人生』(KADOKAWA)
佐藤有香『スケートと歩む人生』(KADOKAWA)

また、日本独特の文化が世界でも知られるようになったこともあるかと思います。日本選手が日本独特の文化を選曲や振付に取り入れても観客や審判員は理解、評価しています。

文化の話からは逸れますが、SNSや動画サイトの発達によって、海外の有力選手の技術を選手自身が分析・判断し、自分の技術向上に取り入れることができるようになったことも、フィギュアスケートというスポーツが欧米一辺倒ではなくなった理由なのではないかと思います。フィギュアスケートとは一見関係のなさそうな電子技術の発展が、日本選手が自分の技術や表現を磨くうえで大変役に立ったといえるでしょう。

フィギュアスケートの2021-2022シーズンももう後半戦。こういった背景をふまえて試合をご覧いただければ、選手たちの強さや魅力をより感じられるのではないでしょうか。

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