適切な目標設定と自己分析
普通の人はOW64を見るとこの用紙自体に驚くのですが、私たちのような教育者は「ドラフト1位、8球団指名」という目標設定に驚きました。これを書いた高校1年生のときの大谷はまだ甲子園にすら出場していないので、普通なら「甲子園出場」と書くところですよね。しかし、自己分析によって自信を持てていた大谷選手は「ドラフト1位、8球団指名」という未来を描くことができたのです。
また、大谷選手は、人を観察する力に優れていました。国内外の選手を観察して、その人が結果を出すための思考や行動をモデリングして参考にしています。人の成功を妬むのではなく、そこからヒントを得て自分の成功に落とし込む力に長けていたことが、さまざまな場面で勝負強さや、勝率の高さとして表れているのです。
そして、運を高めパフォーマンスを上げるために必要な要素として、支援者の存在があります。長期的な成功のためには「有形」のものだけではなく「無形」のものを大切にする必要があると述べましたが、「自分」のほかに「社会・他者」という視点を持てるかも大切です。自分のことばかりではなく、大谷選手はホームラン競争で得た賞金を球団スタッフに分配したり、通訳の水原一平さんを「もっとも支えてくれる人」と評しています。こうした姿勢が他者からの信頼を勝ち取り、パフォーマンスを上げるための味方をつくっていることは、言うまでもありません。
大谷選手の輝かしい成績と運の強さは、綿密な計算の上に成り立っており、決して「運任せ」が良い方向に転がり続けたわけではないのです。成功を勝ち取るためには、適切な目標設定と自己分析が不可欠です。
(構成=作田菜保子 写真=Getty Images)