それから実に40年以上もの時がたって導入された「クラス800」はどうだろう。まるで、使えるIT技術は全部使おうとばかり、さまざまな仕掛けが見られる。
例えば、コロナ禍のさなか一気にポピュラーとなった、Uber Eatsのようなスマートフォンアプリを使った「飲食物のデリバリーサービス」を車内で展開している例もある。
乗客は座席に貼られたQRコードにアクセスし、メニューを選んで決済を済ませると、列車員が注文の品を届けてくれる。実はかつての「インターシティー125」では、車内にバーカウンターが設けられており、そこでお茶やビールをはじめとする飲食物を買うことができた。「クラス800」では、スペースの都合でこうした「売り場」をなくす代わりに「デリバリー」で対応しているわけだ。
ワゴンサービスによる車内販売と併用ではあるが、「クラス800」ではこうした一般社会で使われているIT技術に範を取りつつ、昔ながらに親しまれた文化も残すことで顧客の期待に応えている。
飛行機に対抗する「LCC列車」も登場
HS1、そしてIEP車両の納入で実績を残している日立だが、それ以外にも地方幹線用に導入された例もある(年表参照)。
昨年秋には「クラス800」を使った新たな特急電車「Lumo」が、ロンドン―エジンバラ(スコットランド)にお目見えした。これは、英国初の「格安航空(LCC)の列車版」ともいえるもの。東京―大阪の距離に匹敵する両都市間を、早く買えば安く乗れるようにした。この区間をLCCで飛んだ場合、片道で最低40~60ポンドが相場だが、Lumoでは最低価格15ポンド、最高でも69ポンドと設定している。
所要時間を見ても、不便な場所にあるLCC空港の立地を考えると、市内中心部にあるターミナル駅で乗り降りできるLumoのほうが便利だ。列車本数がまだ少ない、という問題が残るものの「その日にとにかく移動したい」という人々への訴求効果は抜群だ。