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組織能力とその基盤プロセス

組織論では、コミュニケーションや信頼(の構築)などの基盤的な側面を「基盤的プロセス」と呼んで、企業の競争力に直接繋がる組織能力と分ける場合もある。いうなればコミュニケーションや成員の活性化などは、組織としての基盤的な機能であり、これらがきちんと機能していない場合、より高度なモノづくりの能力や知識創造の力などが失われる可能性が高いと考えられるのである(図表参照)。

したがって、ポイントはやはり、こうした基盤的プロセスが企業内でどれだけ維持できているかであろう。表に示したようなデータを見るとき、私は高度な組織能力の基盤となるべき、組織の基本プロセス(コミュニケーション、活力、信頼)などが失われ、今後わが国の企業が、長期的な競争力を維持することが難しいのではないかという危惧をいだいてしまうのである。

そしてさらに私が重要だと思うのは今後、わが国の企業が新たな競争力を獲得していくためには、これまで議論してきたようなコミュニケーション、信頼、活力などのキーワードで示されるような基盤プロセスだけではなく、これまであまり重視されてこなかった(または重要視されてきても、強みにできなかった)幾つかの組織内基盤プロセスを同時に強化していかないとならないことであろう。ここでは、以下に限定されるという意味ではないが、私が重要だと思う3つの基盤的プロセスを挙げておきたい。

第一がリーダーシップである。この連載で何度も強調したように、リーダーシップとは組織内の人間関係プロセスのひとつである。基本的には、自律的なメンバーがリーダーのもつ権威やパワーによらずにリーダーの立てた目標やビジョンについていくプロセスをリーダーシップと呼ぶ。その意味で、リーダーシップとは、人(リーダー)と人(フォロワー)の間に起こる現象だと言ってもよい。