なぜ運動で集中力が高まるのか
ちなみに、運動をすると集中力が高まる大きな理由は、ドーパミンが分泌されるからです。ドーパミンには集中力を保つ働きがあります。たとえば、カフェなどにぎやかな場所で仕事をしたり本を読んだりしていて、最初は耳障りだった周囲の物音が、作業や読書に集中すればするほど気にならなくなる。
おそらくみなさんも、そんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。これは、作業や読書に没頭することでドーパミンの分泌量が増え、必要のない雑音を遮断してくれるからです。
そして、運動をするとドーパミンが分泌されるのも、ドーパミンが分泌されると集中力や記憶力が高まるのも、人類が狩りをして暮らしていた頃の名残だといわれています。
当時、生き残るうえで、「運動」「集中力」「記憶力」は不可欠でした。飢え死にしないためには、あちこち動き回りながら、住みやすそうな場所や獲物を、目を凝らして探したり、以前獲物がとれた場所を思い出したりしなければなりません。
また、獲物を仕留めるためには、頭がクリアな状態で、獲物に気づかれないように細心の注意を払いながら忍び寄り、獲物のわずかな動きも見逃さず、素早く行動しなければなりませんし、ときにはトラやライオンなどから逃げる必要もあります。
脳がドーパミンを分泌して人を操っている
体を動かすこと、集中力や記憶力を高めることが、生き残る確率を増やすことにつながっていたわけです。
そこで、脳は、運動に伴いドーパミンを分泌することで、爽快な気分、幸福感を味わわせ、人間に「体を動かすこと」を繰り返させたり、集中力と記憶力を高め、狩りなどが成功しやすくしたりするようになりました。太古の昔に作られたそうしたシステムが、今も人間の体内に残っているのです。
「疲れているときに運動なんかしたら、余計に疲れてしまうのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、体を動かしていれば、脳は「獲物が見つかっていない状態である」と判断し、より体を動かしたくなるように、そして集中力や記憶力を高めるために、ドーパミンを分泌します。
実際、僕たちも、今では5分間のランニングなど、運動を挟まないと仕事にならないといってもいいくらい、運動が集中力や記憶力、意志力などを高める強力な武器になっています。