「自民党内の保守派に配慮した」という報道も

子ども政策の司令塔として2023年に新設予定の「こども庁」が、ここにきて急に「こども家庭庁」へと名称が変わった。

この議論の座長を務めた加藤勝信衆議院議員によれば、「子どもは家庭を基盤に成長する。家庭の子育てを支えることは子どもの健やかな成長を保障するのに不可欠」と判断したということだが、それはあくまで建前で、実際は自民党内の伝統的家族観を重視する保守派に配慮したからだという報道もある。こっちの説明の方が、個人的にはしっくりときている。

岸田内閣の閣僚も多く加盟している「日本会議国会議員懇談会」と「神道政治連盟(神政連)国会議員懇談会」に名を冠す2つの保守系団体は、夫婦別姓、LGBT法案などとともに「こども庁」に対して後ろ向きだ。

床に座っている子供
写真=iStock.com/Favor_of_God
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「家族の価値」を守るために「家庭」をねじ込む

それがよくわかるのが、神政連の機関紙「意」。ここでは最近、「静かなる有事」という特集が組まれ、今回の子ども庁議論にも影響を与えたと報じられる、モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所の高橋史朗氏が《『子ども庁』議論の問題点》を寄稿、以下のような提言をされている。

《国連の委員会に働きかけて対日勧告を出させ、「こども庁」創設、「子ども基本法」制定を企てている人たちの背後で暗躍する「新しい全体主義」者たちの巧妙な文化革命戦略に騙されてはならない》(意 No.215 18ページ)

本稿によれば、「新しい全体主義」とは、フェミニストがつくりだしたジェンダーイデオロギーに基づく「グローバル性革命」だという。これが国連のロビイングで世界に広まって、健全な社会を可能にする「家族の価値」が奪われている、と高橋氏は警鐘を鳴らしておられるのだ。

このような考えの保守系団体から選挙支援を受ける自民党保守系政治家からすれば、「こども庁」創設を白紙にできなかったら、次に目指すべきは「家族の価値」を最大限守ることだ。そこで強引であっても名称に「家庭」をねじ込んだ……と考えればすべてつじつまが合う。