肥満は「命に関わる大病」のもと

とはいえ、断糖高脂質食を徹底しようとすると、穀物はもちろん、調味料レベルまで見直しが必要。それまで糖質まみれの生活を送ってきた人には厳しく見えるのかもしれません。

「食べられるものがない!」「食の楽しみを放棄して豊かな人生と言えるのか!」など、随分批判もされました。確かに、厳格に取り組むには手間がかからないとは言えません。

しかし、多くの疾患の原因を招く不健康な状態でい続けるデメリットと秤にかけたら、僕はこの食生活が現時点での最適解だと確信しています。ここに、『ガチ速“脂”ダイエット』(扶桑社)でも紹介したメタボリックドミノの図(図表1)を改めて紹介しましょう。

肥満を起点に、あらゆる症状がドミノ倒しのように悪化して起き、病気に至る様が分かると思います。肥満、インスリン抵抗症、高血圧や脂肪肝と進んで糖尿病となり、やがて脳卒中や認知症、心不全といった命に関わる大病にたどり着いてしまう。この流れは肝に銘じておくべきです。

同じ摂取カロリーでも、食べる時間帯で身体への影響が違う

僕の食生活についてお話ししましょう。一日のルーティーンですが、朝は、温かい紅茶やルイボスティーにたっぷりとMCTオイルを入れたものを飲みます。「MCT」とは、中鎖脂肪酸の略です。中鎖脂肪酸は小腸から門脈を経由して肝臓に入り、すぐにエネルギーに変わるので、お昼すぎまで空腹を感じることはありません。

一日のうち、卵や牛脂たっぷりのステーキ、焼き魚、刺身などタンパク質を適正量食べるのは、なるべく昼食と心がけています。脂肪を蓄える元凶であるインスリンは、糖質だけでなくタンパク質を食べた際にも出てしまうからです。

同じ摂取カロリーでも朝食べるか、昼食べるか、夜食べるかで、身体の代謝に与える影響はまったく違います。これを時間栄養学といいます。何をどれだけ食べるかに加えて、「いつ食べるか」が重要であり、昨今注目されている健康分野のひとつです。基本的にはこうした1日1.5食をかれこれ5年間続けていますが、慣れてしまえば辛いと感じることはなく、むしろこれまでいかに自分が暴飲暴食を繰り返していたかを実感してゾッとします。

ウエストをつまむ女性
写真=iStock.com/AH86
※写真はイメージです

逆に、断糖高脂質食を中途半端にやると、痩せられないばかりか身体に悪影響を及ぼす可能性もあります。たとえ痩せても血管は太っていた時のままですので、「体重が減ったから今日はラーメンを食べよう」なんて行為は急激に血管に負担がかかるため非常に危険です。「中途半端にやるくらいなら、初めからやらないほうがいい」と断言したい。

#金森式はあまりにもスピーディーに痩せられるため、とかく減量の側面ばかりが注目されていますが、僕が続ける理由は、ヒト本来の機能回復につながり、これこそが健康長寿の基本だと思うからです。

僕は元気なままで長生きがしたい。人生の最後の10年が病院のベッドの上で体中に管がつながれている状態では、「生きている」というより「生かされている」だけ。そんな老後は絶対に回避したいのです。