もはや事態解決の能力を持たない総務省

4.総務省への違和感

冒頭で紹介したようにこの事件、発生から6カ月たってようやく総務省が重い腰を上げる事態になりました。総務省が原因究明を要請したことで事態は動くのでしょうか。ここに私は4番目の違和感を抱きました。

直近で起きたよく似た別の事件の話をします。リニア新幹線の静岡県内の工区の建設が進まないことに対して、国土交通省がJR東海に地元の懸念を払しょくするように指導するという報道の話です。

この話、もともとは新東名などのトンネル工事で大井川の水量が大幅に減ったという国土交通省がらみの大問題が発端です。中央新幹線の工事でさらに状況が悪化したら困るという地元と工事を進めたいJR東海の間での対立が広がり、両者の膠着こうちゃく状態が続いています。

事態については静岡県側に道理の分がある一方で、一滴残らず水が変わらないように工事しろという難題を知事がJR東海側に突きつければ、事態が膠着するのも仕方ないでしょう。

そこを話し合えと指導するあたり、国土交通省がもはや解決者としての能力を持たないことを露呈したような話だと私は思います。

楽天モバイルの問題も同じで、総務省に報告しても、楽天側の仕事がかなり増えるだけで総務省が問題解決できる話ではありません。ここが違和感の正体だと私は思います。要するに日本の官僚の能力低下こそが問題であり、世の中の問題が複雑化、難題化すればするほど行政の無能化が進んでいくのです。

現代社会の複雑さを象徴している事件だ

みずほ銀行の最近の障害連発事件を見ても同じことを感じますが、社会の変化や進化とともに、頭取ではマネジメントできない技術的な問題が企業の根幹を脅かす時代がやってきたわけです。ところが監督官庁にもそれを解決する力はない。ただただ呼びつけ、報告させ、しかりつけて最後は頭取の頭をすげかえることが起きている。これが4番目の違和感の正体だと思います。

今回の違和感の話をまとめてみましょう。事件が起きているにもかかわらずそんな事件など起きていない体の報道を続けている大手メディア、善意で論点のすり替えに加担するインフルエンサー、仕方なく動いて報告を求める官庁、どれも今流行の動きであり、かつビジネスという視点でみれば、当然そうなるだろう現象が起きているだけだと言える話です。

そのように達観すればこの事件、「直らないものは直らない。いいサービスも提供しているんだから文句をいうな」ぐらいに本家本元が開き直っているのだと考えたら、こてこてに塗布されまくった世の中の欺瞞ぎまんがすべて剥がれて、すっきりした気持ちを感じることができるのかもしれません。かくも現代社会は複雑なのです。

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