米国の大手IT企業は「謝らない」

結局のところ、2週間待って楽天モバイルの広報から来た返事は、ほぼほぼゼロ回答でした。どれだけの件数の障害が起きているのかは公表できない。障害と販売は関係ないと考えている。これが回答でした。一般的に企業の不祥事が発覚したときの表のマニュアルでは、即座に事実を公表して会見を開くこととされています。そうなったら私の記事は外に出ませんでした。

一方で私も経営コンサルタントなので、裏のマニュアルも知っています。私の場合、楽天モバイルのCMに出演している米倉涼子さんは元事務所の先輩ですし、文化人としての現在の所属事務所の社長は楽天出身です。つまり私を身動きできなくする方法はそれなりに存在します。でも楽天の広報は表と裏、どちらも動かなかった。これが第1の違和感です。その正体は何でしょう?

楽天モバイルのライバルのNTTグループはよく謝罪会見をします。わたしたちはそういった企業姿勢が当たり前だと思っていますが、グローバルには実はそうでもない。たとえばGAFA、つまりグーグル、アマゾン、メタ(旧フェイスブック)、アップルといったアメリカのIT企業大手は絶対と言っていいぐらい謝らない傾向があります。

楽天は「もっと大きな問題」と戦っているのではないか

個人情報や納税回避など、かなりきわどいことをやっては裁判を抱え、EUやアメリカ政府とさえ交戦状態に入っているのが彼らの日常であって、日本風の謝罪会見など彼らの眼中にはありません。

その彼らの習性を理解するには、グーグルの「自分たちは世界政府を作る」という創業時の価値観を思い出すといいと思います。今の世の中のルールや制度のほうが間違っているのでそれと戦うのが会社の使命なのだというカルチャーです。

2019年10月15日、シアトル・サウスレイクユニオンエリアの夕焼けに照らされたグーグルのビル
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実は私は楽天という企業はどうしようもない失敗をすると感じることもある反面、憎めない企業だとも思っています。創業者の三木谷浩史CEOが過去30年近く頻繁にシリコンバレーに飛んでGAFAの遺伝子を受け継ごうとしている。楽天も社会を変えようと戦っている。だとしたらこの問題で、これまで楽天が謝罪も公表もなぜしなかったという違和感の正体は、「もっと大きな問題と戦っているからだ」ということかもしれません。