組織論からいえば、こういった異質性はできるだけ排除するという方法があります。学校のようにすべてルールで決め、一から十まで従わせるという手法。楽天やユニクロがそういう世界です。確かに組織としてはスムーズに動きます。けれど、これでは近い将来、組織が行き詰まることになりかねません。

私たち古い世代にとって「テレビは大画面で見たい」という大前提がありますが、若い社員にはそれがありません。「ワンセグで十分」といいます。たとえばそこに、製品開発のヒントがあります。組織の中に異質性があるのは、極めて重要です。

バブル後世代とよく似た世代に、1935~38年に生まれた「戦中世代」がいます。現在、70代前半の人たち。この戦中世代は、軍国主義教育から敗戦によって教科書を黒塗りにされ、民主主義教育へと価値観が180度転換した経験を味わっています。しかし戦後は、彼らが戦争で荒れ果てた日本を復興させ、高度経済成長期の日本経済を担ってきました。そして様々な領域での創造者となっています。歌手の美空ひばりさん、元プロ野球選手の長嶋茂雄さん。ほかにも、名だたる企業で活躍した人の多くは戦中世代です。若者の異質性こそが、真の創造を生みだすのではないかと期待しています。

若者を組織の中で生かす2番目の方法は、成功体験をつくらせること。これがなければ、アイデンティティも確立しません。

91年にバブルが崩壊して以降、多くの会社は成長がストップし、そこで働く社員に成功体験というものがほとんどありません。幸い、私たちが若いころは、日本経済は右肩上がりで、しかもすぐ上が団塊の世代でしたので「あいつらに負けてたまるか」という反骨精神が強く、夢中で頑張りました。それがITです。

好例が、ソフトバンクの孫正義社長。孫さんは、上の世代にできなかったことをやろうと考え、ITを成功させた最初の世代だと思います。自信につながる何かをやり遂げさせるためには、若者により責任のある仕事を任せてみてください。

私自身、若い社員に何度も煮え湯を呑まされ、頭にくることもしばしば(笑)。けれど、可能性を無限に持つ世代として、若い社員と向き合い彼らの考えを代弁できるぐらいの理解力を持つのが、上司の役目。この世代の持つ価値意識を認める度量を持つことが大切なのです。

※すべて雑誌掲載当時

(野村昌二=構成 飯貝拓司=撮影)