ブースター接種は「個人個人が判断すべき」

【鳥集】これから日本でも3回目のブースター接種が進められると思いますが、そもそも要らないということはないでしょうか。

ワクチン
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【宮沢】私はワクチンを打ちたい人は、打ってもいいと思います。リスクとベネフィットをきちんと比較したうえで、個人個人がその判断をすべきだと思います。高齢者や肥満、糖尿病などの基礎疾患のある人ですね。それから病院関係者は、いろんな人に対応しなくてはいけないから、仕方がないのかもしれない。でも、それとても逆のリスクも考えられてしまう。

【鳥集】医学生や看護学生は、打たないと実習させてくれないと聞きます。

【宮沢】新型コロナウイルスのワクチンに関しては、職域接種についても強制されるものではありません。最初はいいかもしれないけれど、その効果や副反応についてわかっているのは現時点でのことだけであり、今後どうなるかは誰にもわかりませんから、そのことも考えて、自らの判断が尊重されるべきです。

とにかく、ウイルスと宿主の関係はとても複雑です。コロナウイルスといっても、ヒト(人間)に流行っているのは1種類だけではありません。風邪症候群を引き起こすコロナウイルスが4種類、他に中国では「腸コロナ」も見つかっていて、腸炎(下痢)を起こしています。

研究対象にはならないウイルスの存在

【鳥集】おなかの「腸」ですか?

【宮沢】そうです。日本でも、コロナウイルスによる腸炎(下痢)は発生していると思いますよ。コロナは主に肺か腸が増殖部位になりますが、腸でコロナウイルスが増殖して病気を起こしたとしても、軽い下痢程度なら誰も研究しない。下痢便を電子顕微鏡で観察すると、コロナウイルスが見えることがあります。コロナウイルスは特徴的な形をしているのでわかるのです。それでも軽い下痢なんてほとんど研究の対象にはならないでしょう。

【鳥集】研究対象にならないのは、ヒト(人間)が死なないからですか?

【宮沢】ええ、よほどの下痢でない限り死ぬことはありません。しかし、交差免疫のことを考えると重要かもしれない。感染すれば免疫はつくわけですから。それで新型コロナウイルスに対して交差反応性があるCTLが誘導される可能性はあります。私は人に感染するコロナウイルスが複数あるなかで、今回、新型コロナだけの単一の免疫をワクチンで国民全員につけてしまうのはどうなのかと、疑問に思っています。

【鳥集】免疫に1対1で対応させるより、幅広く対応させたほうが、生体にとって有利ということでしょうか。