海外では新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、日本でも3回目のブースター接種が計画されている。この動きを専門家はどのようにとらえているのか。京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授に、ジャーナリストの鳥集徹さんが聞いた――。

※本稿は、鳥集徹『新型コロナワクチン 誰も言えなかった「真実」』(宝島新書)の一部を再編集したものです。

予防接種
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接種した人が感染を広げてしまう可能性がある

【鳥集】イスラエルやシンガポール、日本もそうかもしれませんが、ワクチンの接種率が高いのに、感染が拡大する現象が起きました。もっと言えば、ワクチン接種とともに陽性者数が増えていった、つまりワクチンが逆に感染拡大をブーストしているのではないかとさえ見える現象がありました。これについては、どのように思われますか。

【宮沢】最初はADE(抗体依存性感染増強)も疑いましたが、CDC(米国疾病予防管理センター)がワクチンを接種しても感染するし、同じ量のウイルスが出ると公表しました。このことから、スプレッダー(ウイルスを感染させる人)が増えてしまった可能性がないとは言えないと思います。接種した人が安心して飲み会に行って感染し、自分は発症しないから気付きにくく、感染を広げてしまうこともあるのではないでしょうか。

※ADE:抗体依存性感染増強(Antibody-dependent enhancement)の略。ウイルス感染やワクチン接種によってつくられた抗体によって、かえって感染しやすくなったり重症化しやすくなったりする現象。デング熱(熱帯・亜熱帯地域で発生する、蚊が媒介する感染症)のワクチンでは、重症化する子どもが相次ぎ、2017年にフィリピン政府は接種プログラムを中止した。同じコロナウイルスに属するSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)のワクチンも動物実験でADEの発生がネックとなり、実用化に至らなかった。

【鳥集】メディアでは非接種者が感染を広げていると、逆のことが言われてきましたが、それならば接種証明に意味があるのかわからなくなってしまいます。

「日本での最も危機的な時期はすでに過ぎた」

【宮沢】米国のハワイでレストランやジムへの入店時に接種証明の提示を義務づけたにもかかわらず、7月、8月と感染の拡大が起こりました。この事例からは接種証明も逆効果になり得ることがわかると思います。

【鳥集】接種証明の導入に私は反対です。先生は、日本は今後どのようにすべきとお考えですか。

【宮沢】私は、日本での最も危機的な時期はすでに過ぎたと思っています。もともと英国と比べたら、日本は陽性者数も死者数も約20分の1でした。その状況下においてワクチンの感染予防効果がファイザー社の治験結果で当初示された95%だったとしても、英国人の接種率が100%になったところで、日本に追いつくか追いつかないかくらいの話になります。多くの諸外国と日本は初めから状況が大きく異なるのです。