国民全員に新型コロナだけの免疫をつけるリスク

【宮沢】コロナウイルスに感染して免疫が誘導されるわけですが、さまざまなコロナウイルスが人に感染していること自体が、リスクヘッジになる可能性はあると思います。ちょっと意外に思われるかもしれません。

たとえば、Aというコロナウイルスに抗体をもっている人や、B、Cというコロナウイルスに抗体をもっている人が混在していると、たとえAがADEを起こすような強毒ウイルスに変異したとしても、集団全体が被害に遭うことはなく、カタストロフィ(破滅的な状況)を避けることができます。ところが、1種類のウイルスに対してのみ、みんなに同一の抗体をつくってしまうと、ADEを起こす強毒の変異体が出たときに、それに対応できなくなって、人為的な大災害になりかねません。

さまざまなコロナウイルスが人の世界で共存していることは、頭に入れて置いたほうがいいと思います。

ウイルスに感染しても、発症しなければ病気ではない

【鳥集】その集団として、大きな損害が出てしまうリスクがあり得るわけですね。

【宮沢】それを回避するために、集団としてはいろいろな免疫をもっているほうが、このコロナウイルスに対しては得策ではないかと思うのです。一つのコロナウイルスに特化したワクチンでバランスを崩すようなことはしないほうがよいのではないかと。根拠が薄弱で申し訳ないのですが、私はそういうことも考えています。

【鳥集】なるほど。そもそも生物というのは、人智の及ばない複雑系であって、だからこそ、医薬品だって必ずしも理論的に考えたとおりにはならないものなのに、ワクチン推進派の話を聞いていると、1対1対応で、非常に単線的な思考に感じます。

【宮沢】私にはその対応がとても西洋的なものに見えていました。私は学生の頃から「病気とは?」と問われたときに、いつもまずネットワークみたいなものをイメージしていました。病気が何かって、明確に答えられない。ウイルスに感染しても、発症しなければ病気ではないのです。腫瘍が体にあっても、悪さをしないタイプであれば病気とは言わない。

【鳥集】そうですね。前立腺がん等で見られるものに、「潜在がん」といって、死ぬまで悪さをしないがんもあります。前立腺がん以外での要因で亡くなった男性を調べると、およそ3割に見つかるともいわれています。