ユニクロが根強い人気を誇る理由
方向性2は、新規の軸を置いてNo.1をとる戦略です。この場合は、既存の軸を見直す必要があります。
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、ヒートテックやエアリズムなどのテクノロジーを商品の要素として取り入れ、PRし、成功を収めました。これは「機能性」という既存の軸を強めたという見方もできますが、それまでのアパレルにはない、素材の「テクノロジー」を最大限にPRすることで、新たな軸を創り出し、そこで自らNo.1を獲得したといえると思います。
このように、「戦わずして勝つ」ためのいい戦略を描くうえでは、ポジショニングを考え、ねらいを定め、展開することが重要です。
その際、忘れてはいけないのが、前提となるセグメンテーションとターゲティングです。
しっかりとターゲットを見据え、そのターゲット顧客のニーズや不の感情を押さえる効果的な軸を設定することで、ポジショニング戦略が意味のあるものになります。
そして、No.1の存在には「最初に声がかかる」傾向があります。これを「ファーストコール」と呼びます。
自社がターゲットとした顧客が問い合わせをしたいと考えたときに、最初に声をかけてもらえる存在になれているでしょうか? ファーストコール先に選ばれることは、信頼されている証ですし、ビジネスを有利に進めるうえでも効果的です。
兵庫県のクリーニング屋がタワマン共働きカップルに選ばれるワケ
では、どのようにすれば、ファーストコールをゲットできるのか? 次の例で考えてみましょう。
東京のタワーマンションで暮らす共働きのカップルが、春になったので、冬物の衣服をクリーニングに出したいと考えました。そのとき、真っ先に思いついたのが、兵庫県西脇市に本社を構えるクリーニング会社のリナビスでした。いったい、なぜでしょうか?
リナビスは宅配クリーニング事業を展開していて、日本全国に顧客を抱えています。東京のタワーマンションに住んでいる顧客も多くいます。
それは、リナビスのサービスに、次の二つの特徴があるからです。
一つ目の特徴は、「保管」ができること。クリーニングを依頼した衣服を、最長12カ月、無料で保管してくれます。
もう一つが、「おせっかい」をやいてくれること。単にクリーニングをするだけでなく、衣服の簡単な修繕までしてくれます。
東京のタワーマンションに居住している共働きのカップルを想像してみましょう。
二人とも仕事をバリバリしているので、時間がなく、衣服も必要です。一方で、東京のマンションの部屋の収納力には限界があります。また、修繕する時間がないために、糸がほつれた服もそのまま……なんてこともあるかもしれません。