東日本大事震災時を大きく超える大渋滞も発生する

一方で、図表4は図表1~3と同様のシミュレーションを用いて、東日本大震災時の車道の平均移動速度を再現したものになります。東日本大震災時は実際に翌日の朝方まで都心のあちこちで車道の交通渋滞が散見されましたが、このシミュレーションでも1時間3km未満の交通渋滞があちこちで発生していることが確認できます。

【図表4】東日本大震災時の車道の平均移動速度シミュレーション
東日本大震災の再現を試みたケース(車道、発災から1時間後)。Google Earthを基に作成。

これに対して仮に一斉帰宅がなされてしまったという条件下で発生する車道の平均移動速度を予測したものが図表5になります(ただし交通規制がなされなかった場合を想定しています)。図表4と図表5を比較すると、一斉帰宅時には東日本大震災を大きく超える、緊急車両の移動を著しく阻害しかねないほどの大渋滞があちこちで発生することがわかります。

【図表5】一斉帰宅した場合の車道の平均移動速度シミュレーション
仮に通勤者などが一斉帰宅をしてしまったケース(車道、発災から1時間後)。Google Earthを基に作成。

ところで、筆者や内閣府による社会調査では、東日本大震災時は車で家族を迎えに行った人が多いことがわかっています。ですので、シミュレーションではこれが全くなかった場合のケースも計算してみました。つまり、仮に図表5の条件下で家族を迎えに行く人が0だった場合の計算結果です。これが図表6になります。

【図表6】迎えがない場合の車道の平均移動速度シミュレーション
仮に、車で誰も迎えに行かなかったと想定したケース(車道、発災から1時間後)。Google Earthを基に作成。

一人も家族を迎えに行かないというやや非現実な仮定ではありますが、迎えに行くという行動を極限まで減らした場合、緊急車両がかなり活動しやすくなるだろう、という傾向がこの結果より示唆されます。つまり、災害直後における歩道での過密空間の発生および車道での交通渋滞の発生を防ぐためには「帰らない」「迎えに行かない」という人流管理・対応策が非常に効果的であることがわかります。