「厳しい水際対策は国民を守るために必要だ」と産経社説

11月30日付の産経新聞の社説(主張)は「新変異株対策 入国管理徹底で国民守れ」との見出しを掲げ、「新型コロナウイルスの新たな変異株『オミクロン株』の感染が海外で急拡大している事態を踏まえ、岸田文雄首相が水際対策強化を発表した」と書き出したうえで、こう訴える。

「厳しい水際対策は、感染症から国民を守るために必要だ」

正論ではある。だがしかし、水際対策の限界やオミクロン株の性質が解明された時点での規制解除の見通しについても踏み込んで論じてほしかった。

たとえば先の朝日社説は「一方で、ウイルスの解明が進み、門戸を開く環境が整った際には、速やかに実行できるよう準備しておくことも忘れてはならない」と強調している。

産経社説は「各国の政府や研究機関、新型コロナワクチンの製造会社は、オミクロン株の感染力や重症化の程度、既製ワクチンの有効性などの分析、検証を急いでいる」と解説したうえで、「オミクロン株の脅威の度合いが判明すれば、より的確な対応をとれる。ワクチンの3回目接種の加速や、新しいワクチンの開発が必要になるかもしれない。今から備えておくことが肝要だ」と主張する。

日本人の帰国者についても「全世界対象」を求める産経社説

ウイルスの性質が分からない段階ではどうしても対策を厳しくする必要がある。オミクロン株についての科学的な解明に期待するしかないだろう。

産経社説は最後にこう主張する。

「日本人帰国者らが宿泊施設で待機する『厳格な隔離』は、限定された国・地域にとどまる。その他は自宅待機が原則だが、同様に全世界対象でなくて大丈夫なのか。新型コロナ流行の初期に、欧米から帰国した日本人への水際対策が不十分で、ウイルス流入を招いたことを忘れてはならない」

産経社説は外国人だけではなく、日本人の帰国者についても「全世界対象」を求める。産経社説は徹底した水際対策が好きなようだ。ただし、保守的思考が強まると、全体主義に陥る弊害がある。感染症対策では厳しい対策を余りに強調し過ぎると、読者の不安をあおることにもなる。次回以降の社説で構わないので、「正しく怖がる」ことの重要性についても説いてほしいと思う。

【関連記事】
「真犯人は感染者数を煽るマスコミ」給料増えず、物価は急上昇…経営コンサルが恐れる"日本沈没"の気配
「激減した理由すら説明できないのはおかしい」現役医師が痛感した"コロナ専門家"の無責任ぶり
「マイナポイント配布は経済対策にならない」それでも政府が"バラマキ"を続ける本当の理由
「日本一のレタス王国」長野・川上村が外国人に頼りきる農業から脱却できたワケ
メンタル不調のときにまず食べるべき最強で手軽な「うつぬけ食材」